「日々の暮らしには直接関係ないけれど、知っているとちょっと得した気分になる」そんな“知的スパイス”となるキーワードを、キーワードウォッチャーの視点から解説します。

今回の注目ワードは――
ペロブスカイト太陽電池

注目される次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」とは?

またしてもカタカナ用語の登場ですが、これは決して一過性のバズワードではありません。

ペロブスカイト太陽電池とは、「ペロブスカイト」という鉱物に似た結晶構造を用いた太陽電池で、軽量・柔軟・低コストといった特長を持ち、次世代のエネルギー技術として世界的に注目を集めています。

詳細な技術的解説は省きます(検索エンジンやChatGPT先生にお任せします)が、今回はこの技術が日本の国際競争力を取り戻す可能性があるのか?という視点から掘り下げてみましょう。

日本は再び「技術大国」として世界をリードできるのか?

まずは私見を交えてお話します。
日本は基礎技術や製造技術において、今なお世界トップクラスの実力を誇る技術立国だと信じています。
そのため、ペロブスカイト太陽電池のような新領域でも、一定期間はリードできる可能性が十分にあると考えられます。

しかしながら、こうした先端技術は世界中の企業・研究機関が血眼になって開発を進めており、やがて技術格差は縮まっていくのが常です。これは過去の太陽電池、リチウム電池、液晶テレビなどが辿った道でもあります。

製品開発や市場展開という観点では、資金力とスケールの面で欧米や中国に後れを取る可能性が高い。だからこそ、日本が勝負すべきは“緻密さ”と“安全性”に強みを持つ応用技術・製造技術の領域なのです。

半導体事業に見る、日本の「真の強み」

この話をより分かりやすくするために、過去の半導体産業を例に取りましょう。

バブル期の日本は、世界でも屈指の半導体大国でした。設計・製造・材料・装置のすべてにおいて圧倒的な技術力を誇り、一時は「日本独走」とさえ言われていた時代もありました。

しかし、資金力と量産体制に勝る海外勢に追いつかれ、現在では日本国内での半導体製造は風前の灯火と言われるまでに衰退しています。

それでも、製造装置や材料といった“要素技術”の分野では、今なお日本企業が世界シェアのトップを維持しているのをご存じでしょうか?

多くの人が名前を知らない日本メーカーが、世界中の半導体工場にとって欠かせない部品や装置を供給し、グローバル産業を陰で支えている――これこそが、日本の本質的な競争力なのです。

ペロブスカイト太陽電池にも、日本の真価を期待したい

話を戻しましょう。
ペロブスカイト太陽電池においても、まさに同様の構図が成立しつつあります。日本企業は現在、技術開発や量産化の準備を着実に進めています。たとえば――

  • パナソニック:2026年にも住宅向けのペロブスカイト太陽電池を市場投入予定。街中のあらゆる場所で発電可能な未来を描いています。
  • トヨタ系・京大発ベンチャー:曲がる太陽電池の実用化に向けて、EV向け量産体制の構築に取り組んでいます。

これらの取り組みが順調に進めば、ペロブスカイト太陽電池は日本にとって「エネルギー技術での再興の象徴」となるかもしれません。

おわりに

世界の潮流は常に変わり続けます。しかし、日本には「地道に積み上げてきた技術力」という確かな土台があります。ペロブスカイト太陽電池が、日本のものづくりの真価を再び世界に示す舞台となることを、心から期待しています。