
「事務仕事が忙しいのでパートを増やしたい」の落とし穴
経営者との会話の中で、
「事務仕事が忙しいので事務員のパートを増やしたい」
という話をよく耳にします。気持ちは理解できますが、ここには大きな落とし穴があります。
事務仕事は誰でもできる簡単な業務と思われがちですが、これは誤解です。確かに、事務作業はルーティン業務であり、企業の業務を「コア業務」「ノンコア業務」に分類すれば、ノンコアに位置づけられることが多いでしょう。しかし、それが「誰でもできる仕事」とイコールではありません。
もし本当に誰でもできる仕事であれば、もっと効率化されていてもよいはずです。ところが、事務作業を軽視する企業ほど、「事務仕事=改善の余地なし」と考えがちです。その結果、「人手で解決する」という発想に陥り、「事務員を増やせば解決する」と結論づけてしまいます。しかし、これは効率化の阻害要因となり、進化を止めてしまうのです。
事務業務の効率化が進まない本当の理由
私たち「まちの総務」として、多くの企業のITサポートを行う中で、業務効率化の課題を目の当たりにしてきました。企業の規模にかかわらず、「総務的な業務」を担う担当者はどの会社にも存在します。これらのバックオフィス業務は業種や職種を超えて共通するものが多いにもかかわらず、同じ業務内容でありながら、各社・各担当者ごとに異なるアプローチが取られているのが実情です。
その結果、効率的に業務を進めている企業と、非効率な企業の違いが生まれます。
では、この違いは何から生じるのでしょうか?
調査を進めると、その差はシステム化の有無ではなく、担当者の意識にあることが分かりました。
- スーパー事務員がいる会社:問題意識が高く、改善を積極的に行う。
- 指示待ち事務員がいる会社:与えられた業務を疑問を持たずに淡々とこなす。
どちらも事務仕事としては正しく見えますが、実は大きな違いがあります。
「事務仕事が忙しいので事務員を増やしたい」という発想も、スーパー事務員のいる会社と指示待ち事務員のいる会社では全く異なります。極端な言い方をすれば、指示待ち事務員を何人増やしても業務は効率化せず、忙しさは変わりません。しかし、優秀なスーパー事務員が1人いれば、十人分の仕事をこなすことが可能です。
スーパー事務員の存在が効率化の鍵
では、スーパー事務員はどこにいるのでしょうか?
現実的には、優秀な人材が豊富にいて各企業に適切に配置されれば理想ですが、それは難しいのが現状です。スーパー事務員は希少ですが、確かに存在します。私自身も、前向きで高い問題意識を持った数名のスーパー事務員の存在を確認しています。
ここで重要なのは、「スーパー事務員個人」に頼るのではなく、彼らの仕組みをオープン化し、全体の業務効率を向上させることです。
「まちの総務」が支援する仕組み化
スーパー事務員が生み出した効率的な仕組みを、企業単位ではなく業界全体に広めることができれば、多くの企業の事務業務を改善できます。しかし、個々のスーパー事務員が顔を出して情報共有するのは難しい場合もあります。そこで、「まちの総務」がこの役割を担います。
具体的なアプローチ
- 情報共有と標準化の試験運用
- まず、「まちの総務」としてサポートしている企業に対して、優れた業務フローや効率化のノウハウを共有し、標準化の試験運用を行います。
- 汎用システム化の評価
- 実績を積み、汎用性が高く標準化が可能であれば、業務効率化のためのシステムとして導入を検討します。
- スーパー事務員のスキル向上と次のステップ
- スーパー事務員が築いた仕組みを活用しながら、次の改善策を一緒に考えます。
- 優秀な人材は「オープンマインド」であることが多く、自らの成長のために他者の知見も積極的に取り入れます。
スーパー事務員×システム化のプロの協力で生まれる効果
ここで登場するのが、システム化の専門家「システム屋」です。
- スーパー事務員が持つ、現場で培われた実践的な効率化ノウハウ
- システム屋が持つ、業務を仕組みとして最適化する技術
この2つが融合することで、汎用的で業務効率化に直結するシステムが生まれます。重要なのは、オリジナル製品を開発するのではなく、実際の業務にフィットする汎用システムを評価し、導入することです。
正の連鎖を生む事務業務の進化
こうした流れで業務の仕組み化が進めば、中小企業全体にその影響が波及します。その結果、
- 経営者:人手不足を根本的に解決
- 事務員:業務の効率化による負担軽減
という「正の連鎖」が生まれます。
このアプローチこそが、「事務仕事が忙しいのでパートを増やす」前に本当に考えるべきことです。
今後、具体的な事例を交えながら、スーパー事務員の力を借りた業務効率化の事例を紹介していきますので、ぜひお見逃しなく。