地域密着型で「まちの総務」として地道に活動しておりますが、その中で取り組んでいるテーマの一つが、「共助の世界を支えるプラットフォーム」の構築です。

この共助の基本コンセプトは、
「あなたの“困った”は、すでに誰かが解決できる」
という考え方です。

前回の振り返り:設備保守の共助モデル

前回のコラムでは、中小製造業における設備保守の共助モデルについてご紹介しました。

特に多くの方からご質問をいただいたのが、
「メーカーがバラバラだけど、共助は本当に可能なのか?」という疑問です。

これに対し、

  • 実際には、機能に着目するとメーカーの違いはさほど多くない
  • 特殊設備を除けば、基本機構は類似しており、故障箇所も絞られる

という視点から解説しました。

そして今後、パーツ管理からIoTを活用した状態管理へと発展させていくことが理想的である、という点もお伝えしました。

今回のテーマ:共助による専門部隊の組織化と設備DXの可能性

今回はさらに一歩進めて、専門家集団を組織化し、複数企業の設備サポートを担う専任チームを外部に設置した場合に、どのようなDX業務が展開できるかを掘り下げていきます。

「IoT」は静かに、しかし着実に進んでいる

かつて世間を賑わせた「IoT」というキーワード。最近では話題に上る機会も減りましたが、目に見えないところでは静かに、そして確実に浸透しつつあります。

実際に大企業では、設備技術の専門部門がIoTでデータを収集し、それをビッグデータとして解析、さらに予防保全や予知保全へと応用しています。専門技術者の存在により、自社でのメンテナンスやパーツ管理も一元化されているのが現状です。

中小製造業に立ちはだかる壁

一方で、中堅・中小の製造業では、

  • 導入コスト
  • 技術者不足
  • 分析ノウハウの欠如

といった課題により、IoTの導入やビッグデータ活用が進んでいないのが実情です。

さらに、パーツ管理においても保管スペースや費用面から、在庫の種類・量に限界があります。

共助による「まちの設備専門部隊」の可能性

では、このような中小企業が連携してチームを組んだらどうなるでしょうか?

製造する製品や技術的な内容は異なっていても、設備の種類や構造には共通点が多いものです。ここで、「まちの総務」と契約する形で、外部に設備保守・管理の専門部隊を配置したと仮定してみましょう。

1. IoTによる設備の集中管理

同一のIoT機器を導入することでコストを抑えつつ、複数企業の設備稼働状況を一元管理します。

2. 専門家によるビッグデータ分析と保守支援

集められたデータは、専門家チームが分析し、保守・保全計画の策定から現場対応までを担当。企業は生産活動に専念できます。

これは、まさに「まちの設備保険屋」のようなイメージです。

パーツの共同管理と情報共有の仕組み

多くの製造業が自社HPなどで「保有設備一覧」を公開しています。これらの情報をもとに、設備パーツを共通のプラットフォームで管理・共有する仕組みを構築できます。

  • 各社が保有しているパーツを登録
  • 必要な企業がストックから利用し、利用後は補填
  • 型番が不明な部品は、グローバル商社との連携で調達も可能

このような仕組みが整えば、一社では難しい在庫管理や調達も、複数社の共助により実現可能になります。

未来への展望:スマートファクトリーへの布石

中小企業がバラバラに設備保守やパーツ管理に取り組むのではなく、地域や業界単位で連携することが大きな成果を生み出す鍵です。

このような共助モデルを進化させることで、次のステップとして見えてくるのは、
**AIを活用したスマートファクトリー化(設備の自律的管理)**です。

まとめ:小さな連携が、大きな革新を生む

共助による設備管理や保守体制の構築は、中小製造業が直面するリソースの限界を補い合い、未来に向けた競争力を生み出す手段です。

「一社ではできないこと」も、「地域や仲間と束になることで実現できる」。
そんな仕組みづくりを、これからも「まちの総務」として提案してまいります。