日々の業務の中で、「効率化したい」と思っていても、自分ひとりの力ではどうにもできない……そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

「まちの総務」としてさまざまな企業のITサポートを行う中で、私たちは多くの現場で“個人では改善が難しい業務の構造的課題”と出会ってきました。
今回は、ある製造業の企業で伺った実例をご紹介しながら、DX推進の視点からどのように解決の糸口を見出すかを考えてみたいと思います。

ケーススタディ:ある企業の購買業務の実情

ある製造業のお客様では、部品や備品の調達に関して次のような流れで業務が進められていました。

  • 社内の複数の購入希望者(現場担当者)が、それぞれの必要物品を手書きメモやExcelファイルで購買担当者に依頼
  • 購買担当者(1名)がそれらを手作業で取りまとめ、見積取得・発注を実施

一見、ごく一般的な業務プロセスに見えますが、実際にはさまざまな非効率が隠れていました。

購買担当者の声:「私一人では変えられないんです」

購買を担当しているのは若手の女性社員。日々大量の発注依頼を処理しながら、手書きのメモや情報の抜け漏れに対応し、手入力で台帳を作成。そのうえで各社へ発注を行うという、非常に神経を使う業務を担っていました。

ITサポート担当として彼女と会話をする中で、次のような悩みを打ち明けてくれました。

「改善したい気持ちはあるんですが、これは前任者から引き継いだやり方。自分ひとりでは変えられないんです。」

現場の担当者はベテランが多く、これまでのやり方に慣れているため、特に問題意識を持っていません。立場上、意見も言い出しづらく、結果として若手の購買担当者があらゆる情報を手作業でまとめることになっているのです。

根本課題は「インプットのバラつき」

このような問題の本質は、「情報のインプットが統一されていないこと」にあります。

  • 手書きメモや形式バラバラのExcelで依頼が届く
  • 情報の不足が多く、確認作業に時間がかかる
  • 転記ミスのリスクが常に存在する
  • 転記の負担が一人に集中し、ミスが起きても責任の所在が不明確

改善の第一歩として必要なのは、入力フォーマットの統一です。これだけで業務は大きく変わります。

DX視点で見る「インプット統一」の効果

フォーマットを統一することで得られるメリットは以下の通りです。

  • 転記作業の削減:自動で台帳化できる仕組みが可能に
  • 転記ミスの防止:ヒューマンエラーを削減
  • 責任の明確化:誰がどの情報を出したかが明確になる

さらに発展すれば、現場からの入力情報がそのまま発注データになり、購買担当者が発注作業そのものを効率的に進められる仕組みも構築できます。将来的には納品や進捗のステータス管理まで含めてデジタル化できるでしょう。

しかし、見えない「感情の壁」が存在する

効率化の提案は理屈では正しくても、実行の段階で次のような“心のブレーキ”がかかるケースも少なくありません。

  • 「私の仕事が無くなってしまうのでは……」という不安
  • 「これは私の業務ではなく購買の仕事だ」という抵抗感

業務改善には“感情のハードル”の存在も忘れてはなりません。 だからこそ、担当者だけに任せるのではなく、上司や外部の支援者が後押しする必要があります。

まとめ:属人化からの脱却こそDXの第一歩

今回の事例は、「現場でよくある話」と感じられた方も多いかもしれません。属人化された業務フローはDXを阻む大きな壁の一つです。しかし、それは仕組みの見直しと周囲の理解さえあれば、十分に打破可能です。

もし、「自分ひとりでは動かしようがない」と感じている方がいれば、ぜひ第三者のサポートを活用してみてください。私たち「まちの総務」は、そんな時こそお力になれる存在です。

Let’s DX!