
日々、さまざまな経営者の方々とお話しする中で、最近よく耳にするのが「デジタル投資に対する不安や悩み」です。
特に多いのが、以下のような声です。
- かつては一括購入が主流だった業務ソフトも、今ではサブスクリプション型が当たり前に。1回あたりの費用は抑えられているものの、結果的に支払いが積み重なって「デジタル税金を払っているようだ」
- SaaSの導入で業務の効率化が図れるのは良いが、単体導入ばかりが進んでしまい、システム同士の連携が取れず“ポータル的”に使えない。むしろ運用コストが膨らんでいるのでは?
確かに、クラウドの普及によりSaaSサービスは急増し、便利なツールが次々と登場しています。しかし、導入のしやすさゆえに、企業内で複数のシステムが乱立し、結果として管理負担や費用負担が増えているケースも少なくありません。
例えば、勤怠管理、経費精算、人事管理、会計、電子契約など…。それぞれの機能はクラウド上で便利に使えるようになっているものの、提供するベンダーごとに設計思想や連携仕様が異なるため、企業内に複数のシステムが混在しがちです。
こうした状況に対して、多くの企業担当者は次のような不安を感じています。
「この先も、バラバラにSaaSを契約し続けなければならないのか?」
「いつまでも“デジタル税金”を払い続けるのか?」
こうした悩みは、現場に携わる誰もが一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
SaaS時代の“次のステージ”は、統合と共通化へ
ここからは、”まちの総務”的な視点での私見となりますが、今後、このSaaSの乱立状態は徐々に整理・集約されていくと予測しています。
方向性としては、主に以下の2つに収束していく可能性があります。
1. ビジネスSaaSは「有力企業」に集約される
今後、機能と使いやすさを兼ね備えた“エース級”のSaaS企業が生き残り、ビジネス系のツールはそうした限られたプレイヤーに収束していくと考えられます。
そうなることで、同一ベンダー内でのシステム間連携がスムーズになり、共通データベースの活用や情報連携がしやすくなるでしょう。
2. 異なるSaaSをつなぐ「ポータル型統合基盤」の進化
もう一つの方向性は、複数ベンダーのSaaSを連携可能な“ポータル的統合サービス”の登場です。
具体的には、共通のデータベースを中心に、APIやJSONフォーマットを用いた柔軟な連携を可能にする基盤です。
※この時、CSVでのインポート/エクスポートだけに頼るのは限界があります。
このような仕組みが整えば、クラウド上に蓄積されたデータを横断的に活用し、業務全体の付加価値を高めることができるようになります。まさに、クラウド活用の本質は“分断”ではなく“統合”にあるのです。
ノーコードツールとの組み合わせにも期待
加えて、こうした統合ポータルと、誰でも扱えるノーコードツールをセットにした製品群が登場すれば、より多くの企業が低コストでデジタル活用を進められるようになるでしょう。
すでにこうした仕組みが一部では実現されているかもしれません。
もし「これは」という製品をご存知の方がいれば、ぜひ教えてください。
仮にまだないのであれば、国内の有力ベンダーにこそ、ぜひ開発に取り組んでいただきたいと思います。
統合の波は止まらない――クラウドの本質は「つなぐ力」にある
今後、AIの進化により「そんな連携、AIが全部やってくれる」という時代が来るかもしれません。
とはいえ、技術の進歩は「分散」と「統合」を繰り返しながら進んでいくものです。
そして、クラウドの本質はやはり“分断”ではなく“統合”にある――
そう確信する所です。