
中小企業向けにDX研修を行う中で、毎回のように最新の資料やデータを確認し、研修テキストのアップデートを重ねています。
その過程で常に感じるのが、「現場のリアル」と「国や世間が掲げるDX像」とのギャップです。
今回は、2024年に公表された「中小企業のDX推進に関する調査」データをもとに、このズレを考察してみます。
補助金・助成金が“最も期待されている”という現実

「DX推進にあたり、どのような支援を期待するか」という設問に対し、最も多かった回答は「補助金・助成金」(約50%)でした。
DXの障壁としてしばしば挙げられる「予算確保」の対策として、行政支援を求める声が多いことは理解できます。
しかし、ここに大きな課題が潜んでいます。
行政支援が「個別最適」を助長してしまう危険性
補助金・助成金は一見ありがたい仕組みに見えますが、現実には「個別最適の乱立」を引き起こすケースが少なくありません。
現場ではそれぞれ異なる業務フローやITリテラシーを抱えていますが、本来DXとは、業界全体やサプライチェーン全体の“全体最適”を目指す活動のはずです。
AI、ビッグデータ、クラウド、IoTといった「DX四天王」は、単独で成果を出すものではなく、横断的に連携することで価値を生むものです。
にもかかわらず、現行の支援制度では、
- 各自治体が各企業がバラバラに類似のシステムを開発
- 管轄省庁ごとに異なる仕様で非効率なデジタル化が進行
- 結果として、統合を目指す「デジタル庁」の足を引っ張る形に
…という、“税金で非効率を助長している”という皮肉な現実すら見えてきます。
今こそ「モデル事業」や「共助のポータル」への投資を
同じ予算を使うのであれば、
- 全国横断で参考にできる「まちの総務 モデル事業」の構築
- 成果事例を誰もが活用できる「まちの総務モデル事業ポータル」の開設
- 現場同士のノウハウが自然に交流される「まちの総務コミュニティ支援」
こうした“共助”の仕組みづくりに重点を置くべきではないでしょうか。
人材不足に悩む企業が多い今、「あなたの困ったは、すでに解決済みの誰かがいる」という発想で、ナレッジ共有の場を育てていくことが急務です。
「まちの総務」が目指すDXのかたち
私たち「まちの総務」が掲げるのは、“共助によるデジタル変革”です。
補助金を「取って終わり」にせず、そこからつながり、学び合い、支え合うコミュニティの形成を目指しています。
「レッツDX」──ともに、一歩ずつ進めていきましょう。