シリーズ化している「中小製造業のシステム部門化への道」ですが、前回は「マニュアル化と情報ナレッジ化」についてお話ししました。
中小製造企業のDX化計画:⑧具体的な進め方「マニュアル化と情報ナレッジ」
具体的な進め方「何にコストをかけるか?」
今回は、具体的な進め方の一環として「何にコストをかけるか」について解説します。
「何にコストをかけるか」は、IT担当者やIT部門が経営視点で進めるべき重要な課題です。一般的に、IT担当者やIT部門はバックオフィスに分類されますが、この部門は予算化が可能な特殊な領域でもあります。
具体的には、PCの購入や周辺インフラの整備、外注予算などがあります。これらは比較的わかりやすい購入品ですが、システム対応費や対策費、将来的な投資に関しては、説得が難しく予算化も困難です。
特にシステム開発系の費用対効果は理解しづらいため、後回しや保留にされるケースが多くなります。その結果、前向きな投資や事前準備が難しくなり、その場限りの対応に追われることが多くなります。
そこで重要なのが、前回お話しした「ナレッジ情報」の活用です。過去のトラブルデータを基に、被害の大きい問題や重要度を明確にし、優先順位の高いものから根本的な対応策を社内で共有し、問題解決を促進します。
経営者も「生産が止まる」「お客様に迷惑がかかる」といった視点から対応せざるを得ないことが多いため、この基準となる情報を常に収集し、関係者と共有することが重要です。
「何にコストをかけるか」は費用の問題だけではなく、関係者を巻き込んでの対応策協議も含まれます。時には外部のサポートや代替品の準備も必要です。大切なのは、個人や少人数で囲い込まず、組織全体で対応できる環境を整えることです。
上司や経営者への責任転嫁や批判を繰り返すのではなく、「ではどうするか?」という視点で解決策を探ることが、IT担当者の必須スキルとなります。PC設定技術はインターネットで簡単に調べられますが、周りを巻き込む力は自分で気づくしかありません。
これが戦略的な総務や経営的なIT担当者に求められる部分です。
マニュアル化やナレッジの重要性をご理解いただけたでしょうか?
次回は「IT担当者に求められる必須スキル」について整理していきます。