
「まちの総務」としてさまざまな企業のITサポートに携わるなかで、最も多く寄せられる相談のひとつが「共有ファイルの管理」に関する悩みです。
かくいう私自身も、前職では社内のファイルサーバー管理を担当していた経験があり、その大変さや責任の重さは痛いほど理解しています。
■ ファイル共有ニーズの始まり
企業においてPCの導入台数が増えてくると、次に出てくるのが「ファイル共有」のニーズです。
- 「○○さんの作った資料が見たい」
- 「この前のファイルを見せてほしい」
といった声に応える形で、社内で作成したファイルを一元管理できるよう「共有サーバー」の導入が始まります。
これは、どの企業でも自然な流れで発生するIT活用の第一歩です。
■ 利便性の裏で見落とされがちな「運用の設計」
共有サーバーを導入すると、一時的には非常に便利になります。
しかし、運用が始まると次々と課題が表面化します。
最初は「他人のファイルをちょっと見たい」だけだったはずが、便利さゆえにあらゆるファイルが共有サーバーへ集約されていきます。
その結果、IT担当者は次のような責任を背負うことになります。
- 「重要なファイルが消えた。どうにかしてくれ!」
- 「念のためバックアップは取ってるよね?」
- 「なんでリストア(復元)できないの?(怒)」
これらに備えるため、バックアップの仕組みやスケジュール管理、データ保存容量の見積もりなど、多くの検討事項が発生します。
■ 責任は雪だるま式に増えていく
サーバーの台数や容量は増え、ファイル数も容量も指数関数的に膨らみます。
それに比例して、担当者が背負う責任も大きくなっていきます。
ユーザー側はというと、
- 「どこかに無限の容量があるはず」
- 「誰かがちゃんと管理してくれているだろう」
と、無意識に“他人任せ”な意識で共有サーバーを使ってしまいがちです。
中には、自分のPCのバックアップを丸ごと共有サーバーに保存してしまう社員も……。
こうした使い方が進むと、ファイル共有とバックアップだけでは収まらない新たな課題が生まれてきます。
■ 本質的な課題は「運用ルールの欠如」
本来であれば、ファイル共有の導入時に目的や範囲、保存ルールを定めたうえで運用を始めるべきですが、多くの企業では「とりあえず使ってみよう」と軽い気持ちでスタートしてしまいます。
その結果、いつの間にか無秩序な“ファイルの無法地帯”が生まれ、最終的に管理責任だけがIT担当者にのしかかるという構図ができあがってしまうのです。
■ これは一部の会社だけの話ではない
こうした課題は、何も中小企業に限った話ではありません。
大手企業でも、専任部署やシステムが整備されていなければ、似たような問題が起こり得ます。
ファイル共有は一見すると便利なサービスですが、その背後には気づかれにくい“見えない管理リスク”が潜んでいるのです。
それを本当の意味で理解できるのは、現場で運用を担う担当者だけかもしれません。
次回は、こうした「見えないリスク」にどう立ち向かうか、現場で実践可能な対策と考え方をご紹介します。