ビジネスの現場で専門家と呼ばれる方々とお話をする機会が多くあります。雑談のなかで、ふと話題に上るのが「相続」に関する話。
ただ、相続に関する法律や制度は非常に複雑で、しかも実際に自分の人生で数回経験するかどうかというテーマでもあります。
今回は、私自身の興味をきっかけに、調べたり聞いたりしたことを“素人目線”で整理しながら書いてみたいと思います。
※一部、専門用語や法的な解釈に誤りがある可能性もありますが、あくまで一般的な理解を深める参考としてご覧ください。

相続税がかかる人はわずか1割?意外なデータ

前回の記事では、「相続税が実際に課税される人は全体のわずか約9.6%」という驚きの事実をご紹介しました。
言い換えれば、約90%の人は相続税を支払っていないということです。

では、その90%の人々がすべて「相続財産が基礎控除の範囲内だった」のでしょうか?
実は、税制上の工夫を行っているケースも少なくありません。なかでも有名なのが、「暦年贈与(れきねんぞうよ)」という節税対策です。

知っておきたい「暦年贈与」という合法的な節税手段

「暦年贈与」とは、毎年一定額までの財産を非課税で贈与できる制度のこと。
日本では、相続が発生する前に生前贈与という形で財産を分散しておくことで、相続時の課税対象額を減らすという方法がよく使われています。

■ 暦年贈与の基本ルール

  • 非課税枠:1年間に1人あたり110万円までの贈与は非課税
  • 課税対象:110万円を超える部分には贈与税がかかる

つまり、相続財産が基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)を超える場合、この制度を活用することで、課税対象額を抑えることが可能になります。

実例:孫への贈与で約5,000万円を非課税にする方法

例えば、お孫さんが9人いる場合――

  • 毎年110万円ずつ、各孫に贈与する
  • 9名 × 110万円 = 年間990万円が非課税対象
  • これを5年間継続すると、990万円 × 5年 = 4,950万円が非課税で贈与できます

かなり大きな金額ですよね。
この制度を「早く知っているかどうか」が、将来的な納税額に大きく影響するのです。

相続の話は「生前」だからこそ大切

とはいえ、「相続」の話題を生前に持ち出すことに抵抗を感じるご家庭も多いようです。
「縁起でもない」「そんな話をするなんて不謹慎だ」と思われることもあるでしょう。

しかし、相続人が亡くなってからでは、税金対策も、家族間の意思確認も手遅れになります。
実際に、遺された家族が奥様を交えて揉める…という話は、資産家に限らずよくあることです。

だからこそ、生前からの家族間の信頼関係財産の整理が、後のトラブルや税金の負担を防ぐカギとなるのです。

次回予告:相続に関する「財産・権利・義務」の基本とは?

次回は、相続における「財産の種類」や「相続にともなう権利と義務」について、もう少し踏み込んで解説していきます。
相続は「争族」と言われることもあるほどデリケートなテーマ。
だからこそ、正しい知識と備えが、家族全員にとっての安心につながります。