お客様先でシステム導入のご相談を進める中で、一定の確率で議論が頓挫するテーマがあります。それが、「FAX問題」です。

前回のコラムでは、行政機関や金融機関などに根強く残るFAX文化は、もはや個人や一企業の努力では突破できないレベルに達しており、「脱ハンコ」や「脱フロッピーディスク」のように、大臣クラスのリーダーシップが必要だという話をしました。

デジタル庁には、大いに期待したいところです。

今回は「デジタル行政」や「国が描く方向性」から、このFAX問題の突破口を探ってみます。もしかしたら、変革の糸口が見えてくるかもしれません。

対話型AIに聞いてみた「FAXがなくならない理由」

まずは、対話型AIに「FAX廃止が進まない要因」を聞いてみました。以下のような分析が返ってきましたが、非常に的を射た内容でしたのでご紹介します。

1. 書面の信頼性と“安心感”

FAXは受信と同時に紙として出力され、視覚的・物理的に書面を確認できるという点で、特に重要書類や確認書において「安心感」があるとされています。これは、合理性というより“感覚”に近い部分です。

2. インフラ・技術面の制約

中小企業や地方の事業者では、最新のITツールを導入するためのリソースやスキルが不足しているケースが多く、「FAXの方が簡単で確実」という判断になりがちです。

3. 業務プロセスの固定化

長年使い続けてきたFAXが業務プロセスに深く組み込まれており、その変更には大きな労力が伴います。また、すべての取引先が同じデジタル環境にあるとは限らず、「誰でも使える共通ツール」としてFAXが残り続けています。

このように、法令や制度以上に、実務上・心理的な理由がFAX温存の背景にあるのです。

「感情論」が立ちはだかるデジタル化

要するに、「変わりたくない人が一定数存在する」という現実が、DXの進行を阻む大きな壁になっているわけです。

ここまで来ると、もはや説得や正論ではどうにもならず、感情論との戦いになります。そしてこれは、FAXに限らず、あらゆるデジタル化の現場で繰り返される構図でもあります。

「なんとか協会」や「なんとか議連」が裏で動いていないことを祈るばかりですが、いずれにせよ、このような抵抗に立ち向かえるのは、やはり政府レベルのリーダーシップしかありません。

本気の「脱FAX宣言」を望む

「2026年までにFAXの製造・業務使用を全面終了します」といった、インパクトのある政策表明が必要なのではないでしょうか。

強制力を持った“無茶振り”のような政策が、むしろブレークスルーを生むのかもしれません。

私たち現場の人間としては、「FAXヤメレ」の御紋に期待しつつ、静かに準備を進めていくしかありません。