
相続という言葉は耳にするものの、実際に関わる機会は多くの人にとって限られています。
そのため、専門用語や制度の仕組みは難解で、未知の世界に感じられる方も少なくないでしょう。
私自身も、学ぶ前は「漠然とした相続税」という程度の認識しか持っていませんでした。
しかし、相続は誰にでも起こり得る大切なテーマです。
だからこそ「知っているかどうか」で、後々の負担や心構えが大きく変わります。
今回の「門前の小僧解説」では、前回取り上げた「相続に関する権利とルール」に続き、相続税の基礎知識、特に 非課税枠 について整理してみます。(2024年9月時点の制度に基づきます。変更の可能性もあるためご注意ください。)
相続税が発生するのは約1割
国税庁の統計によると、実際に相続税が課税されるのは全体の約9.6%。
つまり、相続税を納める必要がある人は1割にも満たないというのが実情です。
相続財産が「基礎控除額」以下であれば、申告も納税も不要となります。
この“カラクリ”を正しく理解しておくことが第一歩です。
相続税の基礎控除額
相続税の基礎控除額は、以下の計算式で決まります。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例えば、相続人が実子3人の場合:
3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円
この金額以下の相続財産であれば、相続税は発生しません。
ただし、相続財産には現金や預金だけでなく、不動産や有価証券なども含まれるため、油断は禁物です。
生命保険金の非課税枠
もうひとつ重要なのが、生命保険金の非課税制度です。
非課税額 = 500万円 × 法定相続人の数
たとえば法定相続人が3人なら、1,500万円まで非課税 となります。
最近では「相続税対策専用」のような一時払い終身保険も登場し、90歳まで加入可能・健康状態の条件も緩和されるなど、保険会社各社が積極的に商品を提供しています。
保険会社にとっては運用メリットがあり、国としても眠っていた資産を表に出せるという利点があります。
制度の背景を理解すると、双方の思惑もうっすら見えてきますね。
まとめ
こうして整理すると、実際に相続税を支払う必要があるのは全体の約1割。
残り9割の方々は、基礎控除や生命保険の非課税枠をうまく活用することで相続税の負担を回避しています。
相続は一生に何度も経験するものではありません。
しかし、基礎知識を持っているかどうかで安心感は大きく変わります。
まずは「制度を知ること」から始めてみませんか。
次回は「遺言は残された人へのメッセージ」というテーマで掘り下げてみたいと思います。