「相続」と一口に言っても奥が深く、知らないことや未経験の事柄、専門用語が多くの人にとって未知の世界です。
本シリーズでは私が学んだことや専門家から教わったことを、素人目線でわかりやすく解説します。
前回は「相続税の非課税枠」について取り上げました。

──遺言は残された人へのメッセージ──

「遺言書」と聞いて、どのような印象を持ちますか。
・資産家の話で自分には関係がない
・制度が難しく面倒そうだ
・書式や約束事が多く大変そうだ
・言葉は知っているが中身はよく知らない

こうしたネガティブなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
しかし、遺言書は故人の意思を明確に残すための重要な手段であり、相続手続きを円滑に進めるための有効なツールでもあります。

遺言書とは
遺言書は、被相続人が生前に自分の財産をどのように分けるかを記した書面です。遺言があれば、亡くなった方の意思を尊重して相続手続きを進められます。特に「生前にお世話になった人」や「特定の孫」など、民法の定める法定相続人以外に配慮したい場合、遺言がないと法定のルールに従って事務的に処理されてしまいます。

遺言書が持つ意味

遺言書は単なる財産分配のための文書ではなく、残された家族や関係者への最後のメッセージです。
近年は「終活」の一環として、自分の想いを伝えるために遺言を準備する人も増えています
(表現としては「残された」ではなく「遺された」が適切とされます)。

遺言書の種類(概観)

主に次の三種類があります。ここでは詳述せず、必要があれば専門家へご相談ください。
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

ビジネスパーソン向けの実務的ポイント

・家族と早めに話す:財産の話だけでなく、想いや希望を伝えることで、誤解や争いを防げます。
・専門家に相談する:形式や法的効力、手続きの確実性を確保するために専門家の助言を受けましょう。
・定期的に見直す:結婚・離婚・出生・資産の変動があれば遺言の見直しを検討してください。
・保管と周知:遺言の保管場所や、誰にどのように知らされるかをあらかじめ整理しておくと手続きがスムーズになります。

まとめ

遺言書は資産の多寡に関わらず、「遺された人への大切なメッセージ」です。
人生の最後に自分の意思を示す行為は、故人の威厳であり家族への配慮でもあります。
揉め事を避け、故人の想いを尊重するためにも、早めの検討と周囲との対話をお勧めします。

次回は「認知症」が遺言や相続手続きを難しくする点について掘り下げます。