
本章では、単なるキーワード解説にとどまらず、
その言葉が目指す世界は本当に「良い世界」なのか、それとも「危うさ」を孕んだ世界なのか
という点に焦点を当てて考えていきます。
テクノロジーの言葉は、ともすると前向きな響きだけが先行しがちですが、ビジネスにおいて
重要なのは「その先に何が起こり得るか」を冷静に見極めることです。
DAO(分散型自律組織)とは何か
まずは基本的な用語整理からです。
DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、日本語で「分散型自律組織」と訳されます。
ブロックチェーン上で運営され、世界中の参加者が協力しながら管理・意思決定を行う、新しい形の
組織モデルです。
一般的に挙げられるDAOの特徴は以下の通りです。
- 中央管理者が存在せず、参加者同士で組織を運営する
- ソースコードが公開されており、透明性が高い
- 国籍や立場を問わず、誰でも参加できる
従来の企業組織とは大きく異なる思想を持つ点が特徴です。
Web3.0が登場した背景
Web3.0は「次世代インターネット」とも呼ばれ、2018年頃から語られ始めた比較的新しい概念です。
現在のインターネット環境は、Google、Amazon、Meta、Apple、Microsoftといった巨大IT企業に
よって事実上支配されています。
私たちが日常的に扱う個人情報やデータは、特定の企業に集中して管理されているのが実情です。
このような中央集権型の構造には、
プライバシー侵害のリスクや、大規模なサイバー攻撃に弱いといった課題が存在します。
それらの問題意識から生まれたのが、分散型を志向するWeb3.0です。
DAOとWeb3.0が目指す理想の姿
難解な技術論をいったん脇に置けば、DAOやWeb3.0が掲げる基本思想は非常にシンプルです。
国や一部の巨大企業に権力やデータを集中させるのではなく、
個々人が独立し、参加者自身が安全性やルールを担保する世界をつくろうという考え方です。
この理念だけを見ると、
平等で民主的な社会に近づくものとして、前向きに評価されるのも自然な流れでしょう。
理想論の裏側に潜むリスク
しかし、ここで一度立ち止まって考える必要があります。
もし独裁的な国家がこの仕組みを悪用したらどうなるでしょうか。
あるいは、強力なハッカー集団が組織を乗っ取った場合、誰が責任を負うのでしょうか。
さらに、中央集権ではないということは、
国家単位の経済制裁やルールによる抑止が効かなくなる可能性も示唆します。
善悪の判断が完全に個々人に委ねられた結果、
偏った思想や極端な価値観に流されるリスクも否定できません。
「管理者がいない世界」は本当に理想なのか
中央管理者がいないということは、
自由と引き換えに、責任の所在が曖昧になる世界でもあります。
では、管理者が存在すればすべて安心なのかと言えば、それもまた明確な答えはありません。
技術的な基盤や環境は整いつつありますが、現実社会にどう実装し、どう運用するかは
まだ模索段階にあります。
浮かれる前に必要な「議論」
DAOやWeb3.0は、確かに魅力的な未来像を提示しています。
しかし、楽観的な理想論だけで語れるほど単純な話ではなさそうです。
新たな支配者を生まず、公正で公平な世界を実現するためには、
「何が公正で、何が不公平なのか」という根本的な議論が欠かせません。
テクノロジーの進化に期待しつつも、
その影の部分に目を向ける冷静さこそが、これからのビジネスパーソンに
求められているのではないでしょうか。
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