中小企業におけるデジタル化の課題は頻繁に取り上げられていますが、多くの企業では人員や予算の制約から「ひとり情シス」に頼らざるを得ない現状があります。そんな多忙な現場を数多く見てきた経験を基に、このシリーズでは「ひとり情シスを救いたい」というテーマで、関係者へのアドバイスやエールをお届けします。
前回の記事では、「難しい課題は大きな枠組みで捉える前に、まずは細分化して取り組むべき」というシステム面でのアプローチを解説しました。
自分の限界を知り、まずは影響力を高める
今回のテーマは、多少順番が前後しますが、情シス担当者が最初に目指すべきポイントです。デジタルに関する技術や用語は非常に多岐にわたり、すべてを網羅できるスペシャリストは存在しません。特定分野の専門家は多くいますが、それぞれの知識に偏りがあるのが現実です。
「情シス担当=デジタルの専門家」と見られがちですが、実際には多くの情シス担当者はその知識が一部に偏っていることが多いのです。私もこの業界に身を置く中で、多くの情報を収集してきましたが、それでも本質的な専門家かどうかと問われると、少し自信がありません。
この状況に対して、「もっと頑張れ」という声もあるかもしれませんが、自分の限界を理解し、その上で不足している知識を他の専門家に委ねることが重要だと考えています。言い換えれば、「自分が知らないことを知っている人を知っている」ということです。私は、知識を共有できる人とのネットワークを持っています。
これを「トランザクティブメモリー」と呼び、これはこれからの時代に欠かせないスキルだと感じています。
専門家との関係を築き、影響力を高めよう
自分自身が「知識の泉」となることは大切ですが、深い知識については、ググったりAIに質問したり、さらには専門家との良好な関係を築くことで補完することができます。もちろん、情報を一方的にもらうだけではなく、等価交換とは言わないまでも、それに近い形で良い関係性や影響力を持つことが大切です。
こうした考え方が少しでも皆さんの負担を軽減できれば幸いです。