自戒も込めての内容になりますが
日本人特有の現象なのか、それとも世界的に見られる傾向なのかは分かりませんが、「人は他人のことはよく分かるが、自分のことは分かりにくい」とよく言われます。さらに言えば、他人の粗はよく目につくのに、自分の粗は見て見ぬふりをしてしまいがちです。
デジタル関連の話題では、こうした傾向が特に顕著に現れます。例えば、私がデジタルに関する研修やセミナーを行う際によくあるやり取りがこちらです。
Q:「日本は世界に比べてデジタル化が遅れていると思いますか?」
A:全員が声を揃えて「はい、遅れています」
Q:「その原因は何だと思いますか?」
A:「国の施策、規制、教育が不十分だから……」と、さまざまな意見が飛び出します。
ここまでは非常に積極的な意見が聞かれますが、次の質問に移ります。
Q:「では、あなたの会社はデジタル化が遅れていると思いますか?」
A:再び全員が「はい、遅れています」
Q:「その原因は何だと思いますか?」
A:「経営者の意識、体制の不備、教育機会の不足……」など、ここでも多くの理由が挙げられます。
しかし、さらに個人に焦点を当ててみると――
Q:「では、あなた自身のデジタルに関する知識はどうでしょうか?」
A:「……正直、低いです」
Q:「その原因は何だと思いますか?」
A:「……(無言)」
ここで分かるのは、国や会社という大きな単位での批判や意見は容易に出るものの、自分自身を振り返るとその言葉はブーメランのように返ってくる、ということです。
セミナーでは参加者をこれ以上追い詰めることはせず、次のように励まします。「デジタル化の課題は、あなたの会社だけの問題ではなく、国全体が直面しているものです。ですから、悲観することなく、まずは自分のスキルを高めて、会社や社会に貢献できる人材を目指しましょう。」
遠くから批判するのは簡単ですが、結局それは自分に跳ね返ってくるもの。大切なのは、他者と比較するのではなく、自分自身に向き合い、謙虚な気持ちで学び続けることです。