前回のコラムでは、情報セキュリティポリシー策定の流れについて解説しました。この作業は、文書作成に不慣れな方にとって負担に感じることも多いかもしれません。

しかし、心配はいりません。大企業でも中小企業でも、基本的な内容や項目は同じです。また、汎用的なテンプレートも多く公開されており、対話型AIのサポートを活用するのもひとつの方法です。まずは文書の体裁を整え、組織としての方針を明確にすることが大切です。

情報セキュリティポリシーの管理範囲とは?

「どの範囲まで管理すべきか?」という質問はよく耳にします。大企業のようにIT専門部署が整っているなら対応も比較的スムーズですが、ITに馴染みの薄い中小企業では、予算や人員の不足が悩みの種です。「弊社にはここまでの対応は無理では?」という声も少なくありません。

スモールスタートで始めよう

まず強調したいのは、大企業並みの対策を最初から揃える必要はない、ということです。無理に大手に合わせて管理内容を増やしても、現場で実践できなければ形骸化してしまい、かえって無駄になります。そこでお勧めするのが、最低限の対応から始めるスモールスタートです。

「一気に全ての項目を達成するのは無理」と感じるかもしれませんが、だからこそ、できる範囲でのルール化から始めましょう。例えば、今年は30点を目標に、次年度には60点、その次に100点というように、優先順位をつけて段階的に目指すことが大切です。重要項目に優先順位をつけたポートフォリオを作り、ルールとして運用に落とし込みます。

ルール化のポイント

ルール化においては、「やるべきこと」を明示するだけでなく、「現時点でできないこと」を示すことも重要です。そして、将来的な対応計画を明示することで、上層部や親会社に対して「進捗と課題」を報告する土台ができます。

「親会社からの指示だから」と受け身になるのではなく、「弊社ではどのように管理していくのか」という視点で主体的に進めることが重要です。これによって、親会社への報告も実効性のある内容にすることが可能です。こうした調整については、私も得意な分野ですので、ぜひご相談ください。

中小企業ならではの課題と解決策

実際、こうした体制作りを一担当者に任せるのは酷かもしれません。デジタル対応が苦手な経営者や管理職にとってもプレッシャーを感じる場面が多いでしょう。

このような共通課題を解決するために、企業ごとに異なる対応を求めるのではなく、レベル別の共通管理体制やチェックシートの策定が有効です。地域の総務担当者が、企業共通のルールやチェックシートの標準化を推進することで、負担軽減にもつながるでしょう。