前回のコラムでは、「人手不足への有効な対応策としてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を活用すべきである」という提言をしました。大手企業ではすでに一般化しているBPOですが、中小企業においてもその導入が進めば、慢性的な人手不足の緩和につながると考えています。

しかしながら、現実として中小企業でのBPO活用はまだまだ道半ば。なぜ進まないのか――その背景には、経営層のマインドチェンジの遅れが大きく関係していると感じています。

バックオフィスの共通化とBPOの可能性

企業規模や業種に関わらず、総務や経理、人事といったバックオフィス業務には共通性があります。そのため、ある程度仕組みを標準化することで業務効率を大きく改善できます。

せっかく同じ仕組みを構築するのであれば、その一歩先として業務ごと外部に委託=BPOするという選択肢を検討してもよいのではないでしょうか。BPOによって社内リソースをコア業務に集中させることができ、企業全体の生産性向上にもつながります。

最大の壁は「経営者の意識改革」

とはいえ、中小企業にとってこの選択肢には高いハードルがあります。それは「経営者の意識の壁」です。

すでに大企業では当たり前となっているバックオフィス業務のBPOも、規模の小さな企業では「自社内で完結すべき」という意識が根強く残っています。外部委託への抵抗感は、実績や成功事例が身近にないことも要因のひとつです。

新しい挑戦には勇気が必要です。特に、誰もやっていないことに最初に踏み出す「ファーストペンギン」になるには、相応の決断力が求められます。たとえ外部から「やるべきだ」と助言されても、二の足を踏んでしまうのが現実です。

こうした中で先陣を切れるのは、大企業出身の経営者や、過去にBPOを経験している人材がいるケースに限られる傾向があります。まずは一部の企業がモデルケースを作り、その成功例を横目で見た経営者が「それならうちも検討しよう」と動き出す、という流れになるのではないでしょうか。

クローズドマインドがBPO導入の足かせに

BPO導入のもう一つの障壁は、「情報を外に出したくない」という経営者の姿勢です。いわばクローズドマインド。秘密主義が根付き、「業務情報を外部に共有することで、企業の内情が丸裸になってしまうのでは」という不安が根底にあります。

しかし、BPOを導入するからといって、全ての情報を無条件で外部に開示する必要はありません。委託先との契約に基づき、守秘義務の範囲内で必要な情報だけを適切に共有すれば良いのです。これは大企業でも中小企業でも同じです。

BPOはあくまで手段の一つであり、目的ではありません。本来の目的は、「貴重な人材を雑務から解放し、コア業務に集中させることで人手不足の解消に繋げる」ことです。

潮目の変化を仕掛けるか、待つか

DXの波は確実に中小企業にも押し寄せています。バックオフィス業務の効率化、そしてその先のBPO導入は、まさに次のステージへの入り口です。

今後、ひとたび成功事例が共有され、潮目が変われば、一気にBPOの導入が広がる可能性があります。その波を「仕掛ける側」になるのか、それとも「変化を待つ側」となるのか――。

どちらを選ぶかは、経営者のマインド次第です。変化を恐れず一歩を踏み出すことが、未来を切り拓く鍵になるのです。