DXに関するブログやITサポートを行う中で、日々現場のヒアリングや国の施策、各業界の事例に触れています。そうした中で見えてくるのが、「DXを進めたい側」と「求められる側」との間に存在するギャップです。

このコラムでは、そうした実体験をもとに、難解なバズワードとなっている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」について、順を追ってできるだけわかりやすく解説しています。

前回は「なぜ今、DXが叫ばれているのか?」というテーマで、技術進化の視点から取り上げました。テクノロジーの進化と普及は、DXを語る上で外せない重要な要素です。

DXの“X(Exchange)”とは何を意味しているのか?

今回は「DX」の核心である“X=Exchange(交換・変革)”に注目します。変革があるということは、当然「変わる前の世界」があったということです。

ここでは、いくつかの代表的な事例について、「チェンジ前」と「チェンジ後」を比較しながら、DXの本質に迫ってみます。

■ 商取引の変革:リアル店舗からオンラインへ

昭和の時代、商品を購入するには実店舗に足を運び、現金で支払うのが当たり前でした。しかし、Amazonや楽天などの登場により、EC(電子商取引)が日常化。商品の選択から購入、決済、配送までがオンラインで完結するようになり、小売業界や書店など、既存のビジネスモデルが大きく変革されました。

■ 移動手段の変革:タクシーからライドシェアへ

日本ではまだ一部地域に限定されますが、世界ではUberやGrabといったライドシェアサービスが広く普及しています。特に海外旅行時の言語の壁を乗り越える手段として重宝されており、アプリで現在地と目的地を指定し、自動で料金も決済される仕組みは、まさにDXの好例です。

■ 宿泊手段の変革:ホテルから民泊へ

国内ではまだ規制もありますが、世界的には「Airbnb」に代表される民泊サービスが一般化しています。自宅や空きスペースを宿泊先として提供する新たなモデルで、宿泊地の検索、予約、決済までをオンラインで完結できる仕組みは、旅行や出張スタイルの多様化を後押ししました。

■ 支払い手段の変革:現金からデジタル決済へ

ようやく日本でも普及が進んできたキャッシュレス決済。スマートフォンひとつで買い物ができる時代を、昭和世代が想像できたでしょうか? 海外では現金への信用が薄いことから先行して発展し、日本では“現金信仰”が根強く普及がやや遅れましたが、今や小銭も財布も不要、レジでの支払いもスムーズなデジタル決済は、日常に欠かせない存在となっています。

「変化前の世界」を知る世代こそ、DXの恩恵を最も感じている

こうした事例に共通するのは、「Before DX」を経験している世代ほど、変化の恩恵を実感しやすいという点です。一方で、「昔の方が良かった」と頑なに変化を拒む声があるのも事実。

しかし現実には、私たちの身の回りも、世界の動きも否応なく変わり続けています。

平成〜令和生まれの若い世代は、こうした「チェンジ後の世界」が当たり前の環境で育っています。変革前の世界を知らない世代との間には、感覚的なギャップも生まれているのです。

「昔は良かった」と言う前に――変化の本質を理解しよう

DXとは、単なるデジタル化ではなく、「人の行動や価値観、仕組みそのものを変革するプロセス」です。
変化を恐れるのではなく、その本質を理解することで、ビジネスや働き方の可能性はさらに広がっていくでしょう。

「X(エクスチェンジ)」というキーワードから、今一度、自分自身の変革のヒントを探してみてはいかがでしょうか。