DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が一人歩きする中で、私たちはどこへ向かっているのでしょうか?
このシリーズでは、「DX=まちの総務」という視点を出発点に、現場ヒアリングや国の施策動向などをもとに、“求める側”と“求められる側”の間にあるギャップを紐解きながら、DXの本質を順を追って解説しています。

前回は、「DXは『まちの総務』的発想がスタート」であるとし、現場に多く存在するのは“DX以前”の課題、つまりデジタル化の問題であることに触れました。そしてその解決には、「あなたの困ったは、すでに解決している誰かがいます」という視点が重要であるとお伝えしました。

DXの未来像に、私たちは何を描くのか?

ただし、「まちの総務」としての支援が終着点ではありません。
“困りごとの解決”の先にあるのは、統合化標準化といった未来です。これこそが、DXの中核にある世界観といえるでしょう。

たとえば、課題への対応としてまず「デジタル化」が進みます。すでに解決された方法を参考にし、汎用製品が選ばれ、多くの業務が標準化されていきます。ここまでが“個別最適”の世界です。

では、その次に何が起こるのでしょうか?

DXの技術的要素が導く未来

ヒントとなるのは、DXの技術要素──クラウド、AI、IoT、ビッグデータの活用です。

想像してみてください。業務プロセスが標準化され、システムが共通化された世界では、

  • データがクラウド上に集約され、
  • ビッグデータとして蓄積され、
  • AIがそのデータを分析・解析し、
  • インプットとアウトプットが共通化されることで、
  • 人の介在が最小限になる。

この仕組みが実現すれば、IoT機器が自動でデータを収集し、AIが処理し、結果だけを人間が活用すればよい世界が訪れます。

具体例で見るDXの未来

以下に、いくつかの領域で想定されるDXの未来像を紹介します。

● 勤怠管理から給与計算の完全自動化

マイナンバーカードに企業情報が紐づき、勤怠、出張旅費、経費精算などが自動収集・記録されるとどうなるか。
クラウド上に集まった情報をもとに給与計算が自動で行われ、振込まで一貫処理される未来が見えてきます。
さらに、社会保険や税務情報と連携すれば、申告業務までも自動化が可能になります。
これはまさに、デジタル庁が描く将来像の一端と重なるはずです。

● 企業間取引(B2B)の完全統合

B2B取引においても、Amazonの企業向けプラットフォームのような仕組みが普及すれば、企業単位のIDでログインし、受発注から納品、請求、入金までが一元化される世界が訪れます。
行政の会計処理とつながれば、自動で決算・納税処理まで完結させることも夢ではありません。

● 製造業におけるIoT統合と設備保守の高度化

製造業では、各社がバラバラにIoT対応を進めるのではなく、装置メーカーがIoT機能を内包した設備を提供し、統合されたデータをクラウドに集約。
そのデータを分析することで、設備保守やメンテナンスの予測も可能になり、製造業は生産に専念できる環境が整います。

DXとは“全体最適”を目指す未来への設計図

このように、DXは単なるデジタル化とは異なり、“個別最適”の次にある“全体最適”を志向するものです。
最新テクノロジーを活用し、プロセス全体をつなげて統合化・標準化し、最大効率を生む。これがDXの本質であり、私たちが未来に見るべき風景です。

一方で、現状の施策や予算配分は、補助金・助成金といった個別支援に偏っている傾向があります。
そろそろ「DX」を旗印に、国としても**“全体最適のDX”**に向けた舵取りが求められているのではないでしょうか。

レッツDX。未来はすでに始まっています。