仕事柄でしょうか、それとも性格でしょうか。「合理化」や「効率化」が大好きで、お客様と接するたびにお節介なくらい提案してしまいます。しかし最近、ふと「お客様は本当に合理化や効率化を求めているのだろうか?」と疑問に思うことが増えてきました。

システムコンサルを通じてお客様の課題や問題点を伺う中で、それぞれの企業で抱える課題は異なりますが、大きく分けると共通の悩みに集約されます。

課題は認識しているが、具体策が見えない現実

多くのお客様は心の中で「合理化したい」「効率化したい」と思っています。しかし、「具体的にどうすれば良いかわからない」「大勢に影響がないなら、そのままでいいか」という思考に陥り、結果的に動けないことが多いようです。過去には「どうにかしたい」と思った時期もあったかもしれませんが、職場環境や雰囲気に流され、「まあ良いか」と負のループに陥ってしまうのです。

第三者から「何か課題はありますか?」と問われると、少しの期待を込めて「〇〇をどうにかしたい」と声を上げるものの、実際にはそれを具体的な行動に移すのは難しい現状があります。

根深い「探す・調べる・転記する」作業

過去にも触れましたが、効率化を阻む三大要因は「探す」「調べる」「転記する」ことです。多くの企業でこれらが根深い問題となっており、実は無駄な作業だと頭ではわかっていても、声を上げにくい立場や組織風土がこれを支えているのです。

たとえば、新入社員が上司から転記業務を任された場合、意見を言うこともできず、「与えられた仕事」として引き継がれていきます。そして時間が経つにつれ、業務量が増え、上司が異動しても「転記業務」だけは残り続け、誰も異議を唱えないまま、形骸化した業務として引き継がれていくのです。

変わらない組織、報われない業務

「上司から指示された仕事」というだけで、何の意味もない業務が延々と続いてしまう。誰も声を上げないまま、「報われない生産性ゼロの仕事」が今も残っているのです。これは他人事ではなく、まさに多くの企業で起きている現実です。

仮に声を上げたとしても、根本原因を究明したり業務分析を行ったりすることなく、「デジタル化」という表面的な解決策で逃げてしまい、結果として余計な入力作業が増えているのも現状です。

現状維持の空気と、合理化への無関心

このような状況では、「何かを変えなければいけない」と感じつつも、現状維持のままが良いという空気が蔓延しています。「給料の範囲内でやっていれば問題ない」「余計な仕事を増やしたくない」という意識が根付いてしまい、結果として合理化や効率化に対する興味が薄れているのかもしれません。

こうした状況を打破するために、国が推進しているのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。しかし、刷り込まれた意識を変えるのは容易ではなく、第三者の視点が必要です。

次回は、具体的な事例を交えながら、この問題についてさらに掘り下げていきたいと思います。