
「DXを進めるには俯瞰思考が大切です」とお話しする中で、お客様からこんな声をいただきました。
「俯瞰思考は分かった。でも、DXと私の目の前の仕事がどう結びつくのか分からない。」
こうした疑問や戸惑いは、DX推進の現場でよく聞かれるものです。「それは自分で考えてください」と突き放すわけにはいきません。今回は、この問題について考えてみたいと思います。
現場のリアルな声:「DXよりも目の前の業務が大事」
この方の主張を整理すると、次のようになります。
- リスキリング、デジタル化、AI化などの流れや必要性は理解している。
- しかし、直近の業務改善や効率化の方法が分からない。
- 毎日目の前の業務に追われ、余裕がない。
- DXは理論的には理解できても、現場での実感が湧かない。
まさに「事件は会議室で起きているのではなく、現場で起きているんだ!」(by 青島刑事)といった状況でしょう。
実際、多くの現場では、日々の業務をこなすことが最優先となり、「DX」や「デジタル化」といった言葉が遠い世界の話のように感じられるのです。
典型的な業務課題:負のルーティンに陥る現場
例えば、ある製造業の事務担当者のケースを見てみましょう。
- B2B取引の受注業務を担当。
- 受注はFAXやPDFメールで届き、それをExcelに手入力。
- 毎日数百件の情報を処理し、ミスは許されない。
- 業務経験は長く、Excelのマクロを活用して工夫はしているが、常に忙しくイライラしている。
こうした状況では、「AIで事務作業がなくなる」と言われても、「むしろ早くなくなってほしい!」と思うかもしれません。しかし、現実的には改善策を考えなければなりません。
解決策を考える:俯瞰思考で源流を見直す
では、この事務担当者の業務を改善するために、どんなサポートができるでしょうか?
考えられる施策:
- システム化による効率化 – Excelではなく、受注管理システムを導入する。
- OCRの活用 – 手入力を減らし、自動入力を可能にする。
- 業務フローの見直し – 不要な作業を洗い出し、シンプル化する。
- 人員の再配置 – 業務量の偏りをなくし、適材適所を考える。
ヒント①:俯瞰思考で源流に立ち返る
この業務の本質的な課題はどこにあるのか?
- そもそも受注の仕組み自体に問題はないか?
- 手作業を前提とせず、プロセス全体を見直せないか?
ヒント②:上長を巻き込む
現場担当者だけでなく、上司や経営層も巻き込むことで、業務改善の決定権を持つ人たちの理解を得る。
次回は、具体的な改善策をさらに深掘りしながら、「俯瞰思考」を実践的に活用する方法を考えていきます。