前回のコラムでは、企業内の組織単位ではなく、「バックオフィス業務」という共通性の高い領域に着目し、企業間で同様の仕組みを活用することで、システム導入を促進し、属人化を避けるための考え方、すなわち“横串的アプローチ”をご紹介しました。

今回はその続編として、「では、実際にどう進めるのか?」という導入の第一歩について、具体的な視点をお届けします。

バックオフィス業務をあらためて整理する

バックオフィスとは、企業の直接的な売上には関与しないものの、営業・マーケティングなどのフロントオフィス業務を後方支援する重要な業務群です。具体的には以下のような部門・業務が該当します。

  • 総務
  • 経理・財務
  • 人事・労務
  • 法務
  • その他一般事務

企業規模に関係なく、これらの業務は日々の企業活動において欠かすことができません。言い換えれば、「かなりの共通項が存在する領域」であるということが見えてきます。ここが“横串導入”の出発点です。

「同じ業務、バラバラの運用」が非効率を生む

共通業務が存在するにもかかわらず、実際には多くの企業がそれぞれ独自のやり方やルールで業務を遂行しています。特に中小・小規模事業者においては、限られた人数とリソースの中で、Excel関数を駆使したり、手作業で入力業務をこなしたり、個別のシステムを独自に活用しているケースも少なくありません。

結果として、業務の目的や成果は似ていても、その手段や仕組みは企業ごとにバラバラというのが現状です。

さらに言えば、各社の担当者は他社の業務プロセスを知る機会も少なく、自社内の限られた情報だけで日々の業務を回しているのが実態です。

他社の知恵を“横串”に活かすという発想

そこで提案したいのが、「どこかの企業での成功事例=ベストプラクティスを、他社にも流用できないか?」という視点です。

たとえば、ある会社ではExcel関数だけで完結する合理的な管理手法を構築しているかもしれません。また、ノーコードツールを活用して、シンプルかつ汎用的なワークフローを整備している企業もあります。

こうした事例やノウハウを共有・流用するだけで、大きな業務効率化につながる可能性があります。重要なのは、「0からつくる」のではなく「あるものを参考にする」ことで、属人化を防ぎながら、次の改善ステップにもつなげやすくなるという点です。

流用された側にとっても、それが“便利に使ってもらえる仕組み”として評価されれば、結果としてその仕組みはより汎用性のあるものとなり、企業の資産としても価値を高めることができます。

次回は、この「共通業務の見える化」と「共有資産化」に向けた具体的な手順や、実践のための環境づくりについて考えていきます。