企業のデジタル化を支援する中で、意外な壁に何度も直面します。

それが「FAX文化」です。

お客様との業務フローを見直す場面では、かなりの確率で「FAXをどうするか?」という話題がトルネックになります。
たとえば、お客様(企業顧客)からの注文書や伝票類のやり取りがFAXで行われているケース。これが原因で、業務改善やシステム化にブレーキがかかるのです。

■なぜFAXがやめられないのか?

パソコンやメール、インターネットが普及した今でも、FAXに固執する企業は少なくありません。
その理由の一端は、「変えられないルーティン」にあります。
実際に現場でよく見かける事例をご紹介しましょう。

【CASE 1】FAX注文フローの実態

  1. お客様側でPCにて注文書を作成
  2. その注文書を印刷し、FAXで送信
  3. 受信側はFAXという“画像書類”を受け取る
  4. FAX画像を見ながら、内容を手入力で台帳やシステムに登録
  5. 登録内容の確認のため、受領FAXを返信。場合によっては出納帳票をFAX後に郵送

これが令和の現在でも実在する業務フローです。

一見すると「そんな非効率なこと、まだやってるの?」と思われるかもしれませんがこれは昭和から続く“ビジネス慣習”として根強く残っています。
当事者たちも問題意識はあるものの、「仕方がない」と諦めて業務に取り組んでいるのが実情です。

■FAX業務に潜む非効率とリスク

FAXが前提の業務には、いくつもの課題が潜んでいます。

  • 課題①:お客様はPCで作成した資料を、わざわざ印刷してFAXしている
  • 課題②:受信側はFAX画像を見て、再度PCに手入力している
  • 課題③:データミスを避けるため、受領内容をFAXで再確認している

この流れの中でミスが発生した場合、責任は誰が負うべきでしょうか?

  • 注文書を送ったお客様?
  • 受信してシステムに入力した自社担当者?
  • 内容を確認し返信FAXした別の担当者?

責任の所在が曖昧になりがちで、問題が発生しても原因特定や再発防止が困難になります。

■理想のフローと責任の明確化

本来あるべきフローは以下の通りです。

  1. お客様がPCで作成した注文データを、そのままデジタルで送信(FAXを使わない)
  2. 受信側はデータをそのまま処理。転記や手入力は不要
  3. 確認のためのFAX返信も不要

この仕組みによって、発注ミスは送信元の責任として明確になります。
受注側は、届いたデータをそのまま処理するだけなので、ヒューマンエラーのリスクも激減します。

■1対1が1対多に…想像してみてください

上記の事例は1対1の取引ですが、1人の担当者が数百社からのFAX注文を受けているとしたらどうでしょうか?
誤入力のリスク、確認ミス、業務負荷……そのすべてが担当者1人にのしかかります。

それを「OCR」や「FAX自動仕訳」システムでカバーしようとする企業もありますがこれは本質的な解決とは言えません。
あくまで「FAXを前提とした業務フロー」の延命措置に過ぎず、責任の所在をあいまいにしたまま処理だけを機械化しているにすぎません。

■なぜFAX文化はなくならないのか?

いまだ根強く残るFAX文化。
その背景には、取引先との関係性、内部稟議の遅れ、法制度との絡みなど、さまざまな要因があります。

次回は、もう一つの具体的な事例とあわせて、行政のデジタル施策の動向にも触れながら
「FAX脱却」の糸口を探っていきます。

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【DXコラム】脱FAXを阻む“習慣”の正体②:行政・法制度との意外な関係性