日々の業務の中で、私は小規模から中堅、大手まで、さまざまな企業とお付き合いさせていただいています。企業規模によって課題感は異なりますが、その傾向はおおよそ把握しています。

今回は、10名以下の小規模事業所にとって参考になると考えられるご相談事例をご紹介します。

大手企業と小規模事業者の仕事の進め方の違い

まず一般論として、大手から中堅規模の企業は、(例外もありますが)個人に依存しすぎず、組織として業務を遂行する傾向があります。

一方、小規模事業所では「人に仕事が付く」ケースが多く、業務の進め方が属人化しやすい傾向があります。長年の経験や知識に依存して回っている職場です。

事例:パートを増員したのに忙しさが変わらない

ある数名規模の忙しい事務所で、業務負担軽減のためパート従業員を増員しました。
しかし結果は予想外で、既存メンバーの負担は軽くならず、教育の手間が増えて、むしろ以前より忙しくなってしまいました。

このような場合、課題と解決策は何でしょうか。ヒントは「大手の仕事術から学ぶ」です。

キーワードは「タスク」と「フロー」

ここで重要になるのが「タスク」と「フロー」の違いです。

例えば、丸亀製麺の店舗運営を想像してみてください。
うどん生地をこねる → 裁断する → 茹でる → 注文を受ける → 天ぷらを揚げる → レジで会計する
この一連の流れがお客様目線での「フロー」です。

これを細分化すると、

  • うどん生地をこねて裁断する
  • 麺を茹でる
  • 注文を取る
  • 天ぷらを揚げる
  • レジで会計する

これらが「タスク」です。タスクを順番にこなすことで、全体のフローが完成します。

小規模事業所で起きがちな落とし穴

もし小規模事業所で、この一連のフローを1人が最初から最後まで担当していたらどうなるでしょうか。

  • お昼時のような繁忙期には処理が追いつかない
  • 忙しさに対応するため人を増やしても、フローを丸ごと教える必要があり教育負担が増す
  • マニュアルがないため口頭指示が増え、さらに忙しさが増す

結果として、人数を増やしても効率は上がらず、疲弊感だけが残ります。

大手企業が採用する「タスク分担方式」

大手企業では、業務をタスクごとに分けて担当者を配置します(丸亀製麺方式です)。
こうすることで作業は単純化され、教育も容易になり、お客様や案件の増加にも柔軟に対応できます。

この考え方は製造現場でいうところの「単能工(1つの作業に特化)」と「多能工(複数の作業をこなす)」の違いにも通じます。

当然の反論と次回予告

とはいえ、「それは人員が潤沢な大手だからできる話で、もともと人が少ない小規模事業所には当てはまらない」という意見ももっともです。

この反論に対する処方箋については、次回詳しくお話しします。
ヒントは「成長の過程で必ず直面する課題」にあります。