ITやデジタルに関心のある方なら、一度は「未来予想」「未来予測」といった言葉に心をくすぐられた
経験があるのではないでしょうか。
私もその一人で、「次はどんなテクノロジーが登場するのか?」「社会はどう変わっていくのか?」という
想像にいつもワクワクします。

そんな折、総務省のウェブサイトで興味深い資料を見つけました。
それが「情報通信審議会 情報通信政策部会 IoT新時代の未来づくり検討委員会 とりまとめ案(『未来をつかむTECH戦略』)」です。
今回は、この資料をもとに“2030年代に実現したい未来の姿”を読み解きながら
私なりの考察を交えてご紹介します。

2030年代に実現したい未来社会の「工程イメージ」

資料では、2030年代の社会像を次の3つの柱に分けて示しています。

  • I:インクルーシブ(人づくり)
  • C:コネクティッド(地域づくり)
  • T:トランスフォーム(産業づくり)

この3つを合わせて“ICT”としており、まさにデジタル社会の未来図を象徴する構成です。
本稿ではその中から、まず 「I:インクルーシブ(人づくり)」 に焦点を当てます。

「I:インクルーシブ(人づくり)」とは?

年齢・性別・障がいの有無・国籍・所得などに関わらず、誰もが多様な価値観やライフスタイルを
尊重し合い、豊かに生きられる。
そんな“包摂(インクルーシブ)社会”を目指す構想です。

具体的には、以下のような未来像が描かれています。

対象コンセプト実現度(筆者予想)
働く人職場スイッチ⭐️
子どもパノラマ教室⭐️⭐️
ロボットお節介ロボット⭐️⭐️
障がい者あらゆる翻訳⭐️⭐️⭐️
高齢者健康100年ボディ⭐️⭐️

それぞれについて、筆者の視点から解説します。

■ 働く人:職場スイッチ【実現度:⭐️】

複数の仕事に就き、家でもカフェでもスイッチひとつで切り替わるバーチャル個室で働く未来。

リモート勤務や副業の広がりで、この構想は一見現実味がありそうです。
しかし、コロナ禍で加速したリモートワーク文化も、現在はやや落ち着きつつあります。
今後は「ハイブリッド勤務」が主流となり、完全に切り替わる世界までは少し距離がありそうです。
選択肢としては残るものの、大きな変革というより“静かな進化”といえるでしょう。

■ 子ども:パノラマ教室【実現度:⭐️⭐️】

壁や天井、机がディスプレイ化し、VRで時代や地域を超えた体験学習が可能に。

ハード・ソフト両面で教育の進化を感じさせる構想です。
特に「GIGAスクール構想」など既存の取り組みを再点検し、教育の質を高めていくことが鍵になります。
ハードウェアだけでなく、「集中と選択」のバランスを取ることが今後の課題です。

■ ロボット:お節介ロボット【実現度:⭐️⭐️】

朝の支度を手伝ってくれる、まるでドラえもんのようなロボット。

夢のある構想ですが、実現はまだ先の話でしょう。
まずは軍事や医療など、限定的な領域での自動化が進み、その応用として日常生活に広がっていくと
考えられます。“お節介ロボット”が本格的に登場するのは、2030年代後半以降になりそうです。

■ 障がい者:あらゆる翻訳【実現度:⭐️⭐️⭐️】

視覚・聴覚障がい者や外国語が苦手な人でも、自在にコミュニケーションが取れる翻訳支援システム。

この分野は、すでに技術的には実現段階にあります。
AI翻訳や音声認識、骨伝導・電気信号による支援技術などが急速に進化しています。海外勢が先行
していますが、日本発のイノベーションが生まれる余地も大きく、国として後押しが望まれる分野です。


■ 高齢者:健康100年ボディ【実現度:⭐️⭐️】

80〜100歳でも元気に活動できるよう、身体を支える補助アームやARグラスを装備。

高齢化が進む日本にとって、極めて現実的なテーマです。
すでにパワーアシストスーツなどの技術は実用化されつつあり、今後は自走支援型デバイスの普及が
期待されます。介護者の負担軽減にもつながるため、ベンチャー企業の活躍が大いに期待されます。

総括:人づくりの未来は「静かな進化」

「I:インクルーシブ(人づくり)」分野は、ドラスティックな革命というよりも
日常にじわじわと浸透していく“静かな進化”の領域でしょう。
派手さはないものの、確実に社会を便利で優しい方向へと導いていくと考えられます。

次回は、「C:コネクティッド(地域づくり)」技術革新と制度改革の狭間にある
もう一つの未来像について掘り下げます。