近年、頻繁に耳にするようになった「ローコード、ノーコード」という言葉。その背景には、デジタル化の推進やデジタル人材の不足の解消、業務の効率化(たとえば、Excelからの脱却)などがあります。

改めて言葉の整理

「ローコード開発プラットフォーム」とは、従来の手書きのコンピュータプログラミングの代わりに、グラフィカル・ユーザ・インタフェースと設定を通じてアプリケーション・ソフトウェアを作成するための開発環境を提供するソフトウェアです。

「ノーコード」とは、ソースコードの記述をせずにアプリケーションやWebサービスを開発することができるサービスです。通常、Webサービスやアプリケーションの開発にはソースコードの記述が必要ですが、ノーコードを使えばその必要がなく、迅速な開発が可能になります。

これらの定義を見ると、「誰でも簡単にアプリが作れる」という印象を受けますが、これは表面的なものであり、一方で過去の失敗を繰り返す危険性も含んでいます。

大きなメリットとしては、アプリ開発の部品は用意されており、ユーザーがそれらを組み上げてシステムを構築できる点が挙げられます。これはプログラミングのスキルよりも業務の理解が重要であり、業務の流れや全体像を把握している人にとっては便利な機能です。しかし、業務の理解が不足している場合はどんなツールを使っても実現が難しいでしょう。

このような意味で、問題意識が強く課題解決能力がある方々にとっては有効な手段となるでしょう。

しかし、私は単にこれらの「ローコード、ノーコード」の目先のメリットだけでなく、さらに進んでこれらが目指すべき近未来について述べたいと考えています。

そのポイントは「アプリの民主化」です。

ユニクロの柳井さんがあるインタビューで述べた言葉があります。「服は部品に過ぎない。ユニクロの服は誰が着ても似合い、どれを選んでも簡単にコーディネートできる定番商品つまり部品である」と。

これは数年前まで考えられなかった考え方です。ファッションは個人の主張であり、流行に合わせて個性やオリジナル性を主張するものとされてきました。しかし、ユニクロはその定番商品を提供することで、誰でも似合い、組み合わせによって個性を表現できるという新しい発想を提示しています。

私はこれを、企業が行う「デジタル化」にも当てはめてみたいと思います。この視点こそが、私が「まちの総務」が目指す「アプリの民主化」です。

世界中の企業、規模や提供サービスの差はあれど、管理部門や製造サービス部門は客観的に見ると同様の業務を行っています。しかし、それぞれがライバルであり、相手を出し抜くことが競争の鍵となります。

この競争の中で、デジタル化の格差が広がり、日本や世界全体で大きな差が生じています。そして、この救世主となり得るのが「ローコード、ノーコード」ではないでしょうか。

過去には多くの「ローコード、ノーコード」ツールが登場しましたが、消えてしまったものもあります。しかし、過去の失敗を経験し、さらにクラウド環境の整備が進んだ今、「アプリの民主化」の実現を期待しています。

これからは、企業が独自のアプリを開発する時代ではなく、まずは共通のアプリを作り、それにオリジナリティを加える方向に進むべきです。そして、その最適解がSaaSやkintoneなどのツールであると考えられます。

これによって、企業のデジタル化が進み、国が推奨する「デジタル化推進」にも繋がるでしょう。そのためには、マスター系の統合やキーコードの統合化が重要です。

各社が独自のアプリを開発する時代は終わりました。共通のアプリを作り、デジタル化を進め、その上でオリジナリティを追求する。これが私が目指す道です。そして、ユニクロ柳井さんが目指す「ファッションの民主化」と同様に、「アプリの民主化」の世界は確実に訪れるでしょう。

これからも情報発信を続け、共感していただける方々のサポートを得ながら、近未来の実現を見届けていきたいと思います。