DX研修用の教材をまとめる中で、さまざまな資料を読み込むほど、その深みにハマり、方向性に迷いが生じてきました。

特に「DX」という概念の文脈や行政のガイドラインに沿って資料を作成していると、国が求めるターゲットと現場の実際のターゲットに大きな隔たりがあることに気づきました。これにより、私自身も釈然としない部分があり、研修を行う側としても一定の考え方やベースとなる定義を明確にしないと、余計に混乱を招く可能性があります。

厚生労働省の「DX推進リーダー養成プログラム」などは非常に優れた内容で、研修テキストとして参考になります。しかし、この内容を理解し実践できる企業がどれだけあるのか、という点で釈然としない思いを抱えています。

そもそも、対象とされる企業の規模はどの程度を想定しているのでしょうか?IT部門が充実している企業なのか、それともOA担当者が兼務しているような企業規模なのか。この点で大きな乖離が生じます。

例えば、後者の規模の企業であれば、「ああ、そうだね、その方向性に向かっているのね」と理解はしても、それは「対岸の火事」程度の認識で、実際には他人事として捉えている企業がほとんどだと思います。

このような企業に対して「担当者の推進リーダー研修」を行っても、虚しさを感じるだけです。方向性は理解したとしても、実際にどう行動すべきかについて、多くの経営者や担当者が「⁇」という状態になります。

嘆き節になりますが、多くの中小企業、特に100名規模の製造業では「IT専門部署」の設置が難しいのが現実です。150名以上の企業であれば専門部署を設置するイメージですが、IT専門部署がないということは「戦略的なIT活動」が弱く、兼任のIT担当者が多岐にわたる業務をこなすのが現状です。

そのような状況で「DX推進だ…進め!」と言われても無理があります。IT担当者は戦略担当ではなく、専任部署もなく、権限もないけど責任だけはある。これが現場担当者の嘆きです。

その担当者に「DXリーダー研修に参加して学んで来て」と言っても、理想と現実のギャップを感じるだけです。担当者の意識(知識)を高めるのが先か、それとも現実の課題対策が必要か、もっと言えば、一足飛びに違うアプローチが必要か、この辺の課題に直面します。

担当者の意識(知識)を高めることが先行して行われていますが、これにも問題があります。「耳年増」として理屈だけを理解し、理想論ばかり追求して現実とのギャップに虚無感を抱き、不満分子になる可能性があるのです。

現実の課題対策が必要です。DXや組織的対応は担当者個人の問題ではなく、組織全体の課題です。しかし、そのアプローチが一番難しく、これが日本が抱える「デジタル後進国」の課題とイコールになります。経営者や企業が求めるゴールと国が推奨したいゴールが真逆にある、または並行線を別のレールで走っている感じです。

一足飛びに違うアプローチが必要です。「まちの総務」的なアプローチです。上記の課題を各企業で個別に解決するのは無理があります。共通の課題をまとめ、プラットフォームや外部サポートで対応する方策が求められます。

具体的には、IT担当者の業務を軽減するための施策が必要です。以下のような対策が考えられます。

  • PCキッティング作業の効率化
  • サーバー環境の整備
  • 社内ヘルプ内容のポータル化(ナレッジ化)
  • 共通マニュアルの整備
  • 組織体系のフランチャイズ化(議論の余地あり)

この辺については、次回に補足します。