「神エクセル」や「Excel方眼紙」という言葉を耳にしたことがありますか?現在ではこれらはネガティブな文脈で語られることが多く、「時代遅れ」「非効率」の象徴として批判されることもしばしばです。しかし、それらを一刀両断するだけで問題は解決するのでしょうか?
「神エクセル」と「Excel方眼紙」とは?
- 神エクセル
“紙”への印刷を前提に、見た目を整えることに特化したExcelファイルを指す俗語。「紙」が「神」や「ネ申」として言い換えられたものです。 - Excel方眼紙
Excelのセルを方眼紙のように細かく設定し、セル結合や罫線を駆使して文書を作成するスタイル。特に日本の行政文書や企業内文書で広く見られる形式です。
これらはワープロ文化の影響を受けた、日本特有のビジネス習慣といえるでしょう。特に行政や企業の申請書類の雛形として長らく活用されてきました。
「神エクセルは悪なのか?」SNSでの賛否両論
SNSでは、「こんな形式は時代遅れ」「非効率すぎる」という批判がある一方で、「何が問題かわからない」「Wordにすれば満足なのか?」といった擁護の声もあり、議論は平行線をたどることが多いようです。
これらの議論を俯瞰してみると、多くの場合、解決策を提示することなく対立するだけの「ディスり合戦」に終始しています。このような状態では問題解決には至らず、むしろ関係を悪化させるだけです。
そこで重要なのは、「なぜ神エクセルやExcel方眼紙が問題視されるのか」を理解することです。その根底には、“想像力の欠如”という課題が横たわっています。
想像力の欠如が引き起こす非効率
「問題がわからない」という人々は、自分の作業範囲や利便性だけを考え、データの二次利用や全体最適という視点を欠いています。この状況は、例えばマイナンバーカード問題にも通じます。個人の便利さだけを理由に「不要」と結論づける一方で、社会全体の効率化や恩恵には目を向けていないのです。
神エクセルやExcel方眼紙の問題点を、具体例で考えてみましょう:
- 行政の申請書フォーマット
行政がExcel方眼紙形式で作成した申請書を、申請者が入力して提出する。このデータがPDFや紙の状態で行政に送られ、担当者がそれを集計・台帳化する作業を想像してください。 数名分であれば大きな問題にはならなくても、数百人、数千人規模になるとどうでしょう? - PDFや紙の内容は、手入力で台帳に転記する必要があり、作業負荷が増大する。
- 入力ミスのリスクも高まり、確認作業が追加で必要になる。
これらの作業は付加価値を生むものではなく、むしろ非効率の極みです。このような業務が、優秀な職員の本来の業務を圧迫し、全体のパフォーマンスを低下させているのです。
神エクセル批判を超えて:解決策は「全体最適化」
神エクセルやExcel方眼紙を「問題」として指摘する人々の多くは、それらが生み出す非効率に対する危機感を抱いています。ただし、解決策を提示せずに批判するだけでは問題は解消しません。
具体的な対応策としては、以下のポイントが挙げられます:
入力データを二次活用可能な形式にする
- Webフォームやデータベースを活用し、入力データをそのまま集計・分析に利用できる仕組みを構築する。
作業の効率化を推進する
- 無駄な転記作業を廃止し、入力ミスの責任を入力者に帰する仕組みを整えることで、事務作業の負荷を軽減する。
相互理解と協力
- 神エクセルを作成した人々の善意を理解しつつ、効率化の必要性を説明し、全体最適を目指す。
デジタル化の本質:狭義の視点から広義の視点へ
神エクセルやExcel方眼紙問題を巡る議論の背景には、「個人の便利さ」だけで物事を考えがちな傾向が見受けられます。しかし、デジタル化の本質は「全体最適化」にあります。個人の作業負担を軽減するだけでなく、社会全体の効率を高め、相互にメリットを生む仕組みを構築することが求められるのです。
神エクセルを巡る炎上が示すのは、狭義の視点と広義の視点の違いです。バトルに終始するのではなく、互いに歩み寄り、より良い未来を築いていきましょう。