
なぜ日本で「ネット選挙」が実現しないのか?DX視点で考察してみた
デジタル化が加速する現代社会においても、選挙だけは未だに昔ながらの手法が主流です。街頭演説、ポスター掲示、投票所での紙による投票。これらがいまだに中心であり、「ネットで完結する選挙」は現実には存在していません。
「技術的に可能なら、なぜ導入されないのか?」
このような素朴な疑問を、DX(デジタルトランスフォーメーション)の視点から考えてみたいと思います。結論から申し上げると、「ネット選挙は現時点ではほぼ不可能」というのが私の見解です(悲しいですが…)。
■ 技術的には可能、でも制度と環境が追いつかない
現在、ネット選挙の実現に向けて最も有望とされるのが、「ブロックチェーン技術による投票記録の信頼性確保」と「マイナンバーを用いた本人認証」です。実際、エストニアなど一部の国ではすでにオンライン投票が導入されています。
しかし日本では、以下のような課題が大きく立ちはだかります。
■ 日本におけるネット選挙導入の障壁
- セキュリティリスクへの懸念
- 選挙関連法制度の未整備
- デジタルリテラシーの格差
- 国民の信頼・安心感の不足
- インフラ環境の地域格差
- 現行システムからの移行コスト
- 政治的・社会的リスクを避ける風潮
これらの要因が複雑に絡み合い、たとえ技術的に可能であっても「制度化」するには高いハードルが存在します。
■ 誰も“得をしない”制度改革は進まない
もう一歩踏み込むと、ネット選挙導入により明確な「得」をするステークホルダーが少ないという構造的な問題もあります。制度改革には既得権益の調整が不可欠であり、選挙制度に関してはその利害が特に複雑です。
仮に推進の声が上がっても、「時期尚早」として棚上げにされる可能性が高く、結局は現状維持が選ばれてしまう――これが現実です。
■ テスト導入は現実的?でも“儀式”には勝てない
たとえば、与党の党首選挙など小規模・限定的な場面でネット投票を試験導入することは可能かもしれません。
しかし、国政選挙という「厳格な儀式的プロセス」が重視される場では、オンライン化は容易に受け入れられないでしょう。誰かが提案しても、「前例がない」「伝統がある」「透明性が確保できない」といった理由で、軽く却下されるのが目に見えています。
■ 30年後、ドラえもんは何と言うか?
仮に未来に希望を託すとすれば、30年後にはネット選挙そのものではなく、まったく新しい選挙制度や未知のデジタル装置が登場している可能性の方が高いでしょう。
ただし、欧米諸国も選挙については依然としてアナログ寄りです。日本だけが遅れているわけではなく、世界全体で「慎重な分野」だと言えます。
■ 結論:DXで変えられない領域もある
今回の考察を通じて見えてきたのは、「技術だけでは変えられない領域」が確かに存在するということです。民主主義という制度の根幹に関わる分野だからこそ、技術導入には極めて慎重にならざるを得ない現実があります。
自分たちの世代では実現を目にすることはないかもしれません。けれども、次の世代、そしてその次の世代に向けて、今から想像力を膨らませておくことも、DX時代を生きる我々の使命のひとつかもしれません。
あなたはどう思いますか?「ネット選挙」、本当に必要ですか?それとも…。