世代間の議論には興味深い視点があります。その一例が「根回し」です。

「根回し(ねまわし)」とは、「物事を進める際に、事前に関係者の了承を得ること」という意味を持ち、ビジネスシーンでは重要な交渉や稟議を通す際に用いられます。根回しを行うことで、物事を円滑に進め、結果として組織の意思決定スピード向上にも繋がります。

この「根回し」はかつて政治の世界や企業の社内政治で用いられることが一般的でしたが、近年ではSNSを中心とした世論と識者との間に壁が生じています。

「根回し」が必要かどうかは、物事を円滑に進める上でのテクニックとして議論されています。特にSNS世代では、「これは必要だろう」「大方賛成だろう」という場合、関係者の根回しを省いて進めることが一般的になっています。

しかしながら、何を判断するかよりも、誰が判断するのかが重要であると考える世代では、「根回し」が欠かせないものとされています。過去の判断基準においては、「根回し」が仕事の一環であると認識されていました。

そのような議論が行われたのは、約25年以上前のある案件でした。当時、私は電子承認回覧システムの開発を担当していました。紙書類の回覧押印処理を電子文書と電子印による関係者回覧と承認に置き換える完全電子化のシステム構築案件でした。

そのシステムは「購入稟議書の電子承認」と「不適合電子回覧」のワークフローを中心としており、当時では前衛的なものでした。

しかし、担当上司が不在の際や差戻しの際に生じる戻り処理や再開処理などの問題が議論されました。紙書類であれば、直接説明を受け承認を得たり、フィードバックがあれば即座に対応できましたが、電子化によって手間が増えるという指摘がありました。

そこで、私たちは「e根回し」という概念を考案しました。これは、電子書類の回覧とは別に(並行して)、事前に説明と合意を得る手順を設けるものです。具体的には、細かな説明資料を配布する前に、「このようなことを行いますので、了承しておいてくださいね」という形で事前に合意を得た後、形式的な承認回覧を行い、スムーズな電子承認を行う仕組みです。

今となっては、これは昭和世代の仕組みとして無駄であると認識されます。現在では、より効率的な方法が提案されるでしょう。例えば、デジタルとアナログのハイブリッドな仕組みが考えられます。

若い世代に「根回し」について尋ねると、「何それ?」という反応が返ってくるかもしれません。しかし、本質的な議論が変わりつつあることを考えると興味深いですね。