中小製造企業のデジタル化計画:守りから攻めへの道

こんにちは、シリーズ「中小企業の身の丈デジタル化計画」へようこそ。今回の第一回目では、対象となる企業規模や業種について詳しく解説していきます。

中小製造企業の現状

国内の企業の99%以上は中小企業です。しかし、中小企業と言ってもその規模や業種には大きな違いがあります。このコラムでは、特に50名から100名規模の製造業をターゲットに話を進めます。

なぜ50名から100名規模の製造業を選んだのかというと、過去の記事でも触れたように、経験的にこの規模が「IT専門部署」の設置の境目となることが多いためです。

IT専門部署の有無が企業の分かれ目

社員数が130名以上の企業では、通常、体制的に「IT専門部署」を設けることができ、部門として組織だった活動が可能です。しかし、それ以下の規模では、予算や人員の制約から総務内の担当が兼任でIT業務を行うケースが多く見られます。

俗に「ひとり情シス」と呼ばれる担当者が、PC導入時の設定担当から始まり、いつしかネットワークや共有ファイルサーバーの管理、さらにはITサポートまでを兼任することになります。このように、自然発生的にIT担当者が誕生するのです。

兼任ボランティアとしてのOA担当

重要なキーワードは「兼任のボランティアからのスタート」です。専門的なITスキルや組織運営の経験がない状態でOA担当者が任命されます。PCに対しての苦手意識が少ない社員が選ばれ、社内のOA業務を担当することになります。

想定されるOA担当の業務内容

ハード面の業務:

  • PCの購入から設定(購入品の選定、購入準備)
  • PC周りの環境設定(プリンター、共有サーバー、ネットワーク設定)

ソフト面の業務:

  • 社内イントラネット設定
  • セキュリティ対応とユーザー設定
  • 社内システム設定
  • SaaS製品のサポート

その他:

  • サポートとトラブル対応
  • 関連情報の整理

これらの業務を、自身の本来の業務と兼任しながら実施するのが現状です。

守りから攻めへの移行の難しさ

このように、担当者が1人ないし数人で実施しているため、デジタル化推進担当としての「攻め」よりも、OA環境の整備と安定運用の「守り」がメインとなります。この違いが、100名前後の企業の「守り」と、それ以上の企業の「攻め」との差となります。

中小製造企業にとって、「DX」という大きな目標を掲げることは難しい現状があります。このギャップを埋めることが、DX推進の鍵となるでしょう。

次回は「IT担当(OA担当)とIT専門部署の違い」についてお話しします。お楽しみに。