中小企業のデジタル化が叫ばれる中、限られた人員や予算の影響で、「ひとり情シス」に頼らざるを得ない現状が多く見受けられます。これまで多くの現場を見てきた経験と自身の体験をもとに、「ひとり情シスを救いたい」というシリーズ企画として、関係者へのアドバイスや応援のメッセージをお届けします。

前回は「管理と運用は分けるべし」というテーマで、運用がメインになりがちな業務体制から脱却し、管理体制を確立する重要性について述べました。
①シリーズ企画「ひとり情シスを救いたい」① 管理と運用は分けるべし

「手柄を作るより貸しを作る」

今回のテーマは「手柄を作るより貸しを作る」です。デジタル化が進む過程で、中小企業内でも社内のデジタル格差が広がり、その結果、少しでも技術に詳しい(PC好き)社員が重宝され、やがて「IT担当」になることが少なくありません。当初は、頼られることにモチベーションが上がり、自己肯定感が報酬になります。しかし、その感謝の言葉が手柄としてしか見えなくなると、次第に不満が蓄積し、孤独感を強める原因となります。

「手柄より貸しを作る」というマインドチェンジ

この状況を乗り越えるためには、感謝の言葉やボランティア精神を手柄と考えるのではなく、「貸しを作った」と捉えるマインドチェンジが有効です。この「貸し(徳)」を積み重ねることで、自身の立場や影響力が自然と大きくなっていくのです。

過去の経験ですが、今から25年位前に前職で「ひとり情シス」として実務を行っていた時、会社のトップから「海外出張中にメールを確認できるようにしてほしい」と依頼されました。初めての経験でしたが、VPNを使って社内サーバーに接続する方法を模索し、専用のVPN接続マニュアルを作成。トップからは非常に感謝され、その後もIT関連の相談を受けるなど、良好な関係を築けました。この経験から、私は「手柄を作るより貸しを作る」ことの重要性を学びました。

デジタル格差を逆手に取って「徳を積む」意識を持とう

社内のデジタルヒエラルキーを逆手に取り、虚勢を張るのではなく、「貸しを作る」という「徳を積む」意識を持つことで、気持ちも楽になり、より良い人間関係を築くことができるでしょう。やらされ感から徳を積むマインドチェンジを図りましょう。