中小企業におけるデジタル化の課題は多くの現場で叫ばれていますが、人員や予算の制約から「ひとり情シス」に頼らざるを得ないケースが少なくありません。そんな現場を見てきた私の経験をもとに、シリーズ企画「ひとり情シスを救いたい」として、IT担当者や経営者の皆様に向けたアドバイスをお届けしています。

前回は「投資の優先順位を経営者目線で考える」というテーマで、限られた予算の中でいかに効果的にデジタル化を進めるかを議論しました。今回はシステム開発にフォーカスし、「目先のオリジナル開発よりも、長期的には汎用品を活用する努力をすべきだ」という点についてお話しします。

オリジナル開発からの脱却が必要な理由

経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」にも関連しますが、約2000年前後のITバブル期に、多くの企業が独自の生産管理システムを導入しました。それから数十年が経ち、当時のバブルがはじけた後は、デジタルに関する大規模な投資も減少。結果として、古いシステム(レガシーシステム)に依存し続けている企業が少なくありません。

「2025年の崖」に関する報告では、レガシーシステムに起因する問題として、外部のSIer(システムインテグレーター)の不足や、ハードウェアの老朽化が指摘されています。実際に、私たちの会社への相談でも「できるだけ低予算で同じ機能を維持したい」という声が多く寄せられています。しかし、そのアプローチでは本質的な課題解決には至りません。

汎用品の導入で得られるメリット

古いシステムの維持にこだわるよりも、汎用品への移行を検討することが、結果的に長期的なコスト削減につながる場合が多いです。システムの基本は、入力(Input)と出力(Output)であり、その間の処理が違うだけで、どんなに大きなシステムでもこの「I/O」の繰り返しにすぎません。

もしあなたの会社がレガシーシステムの維持に苦労しているのであれば、まずはExcelやクラウドベースのDBツール、SaaSなどの汎用ツールを活用し、柔軟なシステム運用にシフトしてみることをお勧めします。予算が限られた中でも、汎用品を組み合わせることで、今までのオリジナルシステムに匹敵する機能を実現することが可能です。

結論

今後のビジネス環境や働き方の変化を考えると、昔ながらの独自システムに固執することは、むしろリスクを高めることになります。まずは、自社のシステムを見直し、汎用品への移行を進めていくことが、DX推進への第一歩です。