デジタルトランスフォーメーション(DX)についての議論は日々盛んに行われていますが、しばしば「魔法の言葉」のようにふんわりと語られ、その具体像が見えにくいことが多いです。経営者や現場の担当者も、よく聞くのは「DX?理屈はわかった、で、結局何をするの?」という問い。しかし、この問いに対する明確な答えが提示されることは少なく、大手企業の漠然とした事例や表面的なアドバイスだけが語られることもしばしばです。

そこで、今回のコラムでは、DX推進に役立つフレームワークを提示し、企業が実際にどのように取り組むべきかを考察します。

DXとデジタル化の違いを整理する

まず、DXの定義と「デジタル化(IT化)」の違いを明確にしましょう。DXとは単に業務を効率化するIT化とは異なり、業務そのものを根本から変革し、場合によっては不要にすることを意味します。特に中小企業においては、DXの旗振り役となるのは経営者であり、その決断がDXの成否を握ると言っても過言ではありません。

では、DXを「一言で言えば」と聞かれたらどう答えるでしょうか?

職位ごとの責任と権限に基づくDXの解釈

ISO認証を取得している企業では、職位に応じたマネジメントレビューが行われていますが、ここからDXを読み解いていきます。

職位ごとの責任と権限を整理すると、次のようになります。

  • 経営者:ヒト・モノ・カネの視点から変革を主導
  • 管理職:ヒトとモノの視点から変革を推進
  • 一般職:モノの視点から業務改善を実施

このように、経営者と管理職の視点からは、変革の範囲は大きく、これがDXの対象となります。一方、一般職の視点からの変革は、主に業務改善にとどまり、DXというよりはデジタル化やIT化に近いアプローチとなるでしょう。

課題抽出と変革の進め方

次に、各職位が抱える課題を具体的に見ていきましょう。

  • 経営者:経営的な視点から抽出される課題(例:人員不足、ブランド価値の向上、売上確保、新規事業創出)
  • 管理職:旧来の業務形態からの脱却(例:紙の廃止、情報共有の効率化、FAXの廃止など)
  • 一般職:グループでのディスカッションを通じた課題の抽出(自身や部署の課題整理、自己解決や他者依存の問題整理)

ここで重要なのは、これらの課題を解決するためには、利害関係のない第三者が旗振り役として必要だということです。

第三者の重要性

階層ごとの課題解決において、内部の人間では解決が難しい場合が多く、特に以下の理由から外部の第三者が重要になります。

  • 経営者:経営者は孤独な立場にあり、社員に悩みを打ち明けることができないため、外部の視点が必要です。
  • 管理職:部下と上司の板挟みになることが多く、新たな知識や変革に対して腰が重くなりがちな管理職には、第三者のサポートが欠かせません。
  • 一般職:上司の前では本音を言いにくいことが多く、第三者が課題を引き出す役割を果たすことが効果的です。

DXの正しい進め方

固着した課題を解決し、変革を進めるためには、第三者の視点による可視化が不可欠です。問題をデジタル課題として整理し、解決の糸口を探ることで、真のDXが実現できるのです。

以上のプロセスこそが、企業における正しいDXの進め方だと言えるでしょう。