製造業の現場を深く知るために、多くの工場視察の機会に恵まれています。ただ見学するだけではなく、独自に重要なポイントを押さえて視察することで、工場の状態や課題を理解する手助けになっています。
前回のコラムでは、視察時に「5Sの確認」が重要であること、5Sの徹底が企業の体質を表す要素にもなることをお伝えしました。ただし、それを社内に根付かせるには、専門家の支援による教育や社員意識の改革が必要であり、企業単独では難しいと述べました。
今回は「海外工場のものづくりの現状」について、現地担当者や関係者から得た情報を基にお話しします。
海外の製造業と日本の中小企業の違い
特にアジア地域では、日本企業の進出が進む一方で、地元の製造業も活発です。ここで特徴的なのは、アジアの中小企業経営者には富裕層が多く、大規模な資本を背景に格安で大量生産を行う企業があることです。その結果、価格面での競争力は日本国内の工場を圧倒し、世界中に広がる製品の供給が可能となっています。
日本との勝負の場は「品質」
「Japan as No1」と呼ばれる日本の品質は、現在でも世界的に高く評価されています。効率化や資本力での競争には難しさがありますが、日本の強みは一貫した高品質にあります。
アジアの大規模工場では、例えば1000個の不良品が出ても品質改善ではなく、2000個の良品で補填する、といった対応が見られることもあります。以前はこのような対応がスタンダードでしたが、近年では品質の重要性が再認識され、特に欧米や日本市場向けには「安かろう悪かろう」は通用しなくなっています。
「日本品質」を学ぶ海外の工場
一部の海外工場では、日本品質の重要性を理解し、「Japan as No1」を目指して品質向上に取り組み始めています。高い資本力と最新設備を備えた海外の工場に日本のものづくりマインドが加わることで、世界市場における競争力が高まり、日本の中小企業にとって大きな脅威となり得ます。
日本の製造業の未来と課題
このような状況下で、日本の製造業は国内展開に注力するのか、あるいは世界と真っ向から競争するのか、選択を迫られる時期に来ていると感じます。しかし、残念ながら明確な答えはまだ見えていません。
今後、日本のものづくりが世界市場でどのように存在感を発揮するのか、引き続き注視が必要です。