近年、AIに関する話題が増える中、「AIでなくなる仕事」というフレーズが注目を集めています。しかし、多くの場合、この議論には曖昧さや誤解がつきまといます。今回は、「AIによるシステム開発の代替」というテーマで、特に製造業を例に考えてみたいと思います。

製造業の全体像を俯瞰する

まず、製造業を簡単に整理しましょう。製造業は、顧客の要求に基づいて製品を提供する業種であり、そのプロセスは多岐にわたります。以下はその流れをざっくりと分解したものです。

  1. 顧客要望の受け取り(図面や仕様書)
  2. 見積もりの提示と受注(仕様に基づくコスト展開)
  3. 社内展開(部材発注、工数計算、スケジュール立案、プロジェクト化)
  4. 製造準備(外注手配、納期管理、材料在庫の確認)
  5. 製造工程(加工、進捗管理、品質管理、設備保守)
  6. 製品完成(検査、配送、請求管理、収支管理)

これらの流れの中には、業種や規模に関係なく共通する要素が存在します。この共通点を見出すことが、AIやDXの導入を考える上での重要な一歩です。

システムの汎用化とAIの可能性

製造業のプロセスは多種多様ですが、どの企業も「顧客の要求(Input)」に対し「製品やサービス(Output)」を提供するという基本構造は同じです。この観点から、次のような仮説を立ててみます。

  1. 既存システムの汎用化
     細分化された工程のうち、特に「ノンコア」(共通性の高い処理)部分を汎用的なシステムに統合。たとえば、部材発注や進捗管理は、業種を超えて共通化が可能です。
  2. AIによる自動化と最適化
     過去のビッグデータを活用して、次のようなタスクをAIが代替できる可能性があります。
  • 要求仕様から部品や材料の選定、コスト試算、見積もりの作成
  • 部材発注や外注依頼の自動処理
  • 製造計画の最適化と進捗監視
  1. ノウハウを生かした補完
     コア技術や専門知識が必要な部分はAIを補佐的に活用し、DXを推進します。特に、設計や高度な技術的判断は、人間の知見を活かしながらAIを活用する形が理想的です。

DX推進の鍵は「俯瞰」と「柔軟性」

「うちは特殊だから汎用化は無理」といった姿勢ではDXは進みません。むしろ、自社の業務を俯瞰的に見直し、他社と共通化できる部分を積極的に見つけることが重要です。ノンコア業務の共通化により効率化を進めつつ、コア業務にリソースを集中させることで競争力を高めることができます。

AIによる未来のシステム像

最終的には、AIが以下のような形で企業の基幹システムを代替・補完する未来が想像できます。

  • 過去データを基に、顧客要求から製造プロセス全体を自動展開
  • 材料の発注、加工指示、納期調整を自動処理
  • 進捗や品質管理、予算管理のリアルタイム最適化

まだ妄想の域を出ませんが、こうした方向性を目指すことで、製造業におけるDXは一歩前進するでしょう。

最後に

AIやDXの導入は「固有技術」と「共通業務」のバランスが鍵です。固有技術は自社の強みとして磨きつつ、共通業務の効率化を通じて競争力を高めていきましょう。そして、同じ志を持つ仲間とともに、未来のものづくりを語り合いましょう。

次回は、AIによって無くなる仕事「教育」無くなると言うより変革