
生産管理システムをDXの視点から紐解くシリーズブログの第2回です。
前回は「生産管理システムの定義」について解説しましたが、今回は「業種業態によって生産管理システムはどのように異なるのか?」を考えていきます。
生産管理システムは業種業態で異なるのか?
前回も触れましたが、製造業やサービス業は、顧客の要求(インプット)に対して製品やサービス(アウトプット)を提供する活動です。
この視点から、生産管理システムの基本的な構造を整理すると、大きく以下の3つの段階に分けることができます。
- 前段階(調達・受発注管理)
- 製造に必要な部材や加工業者への見積依頼、注文書の発行
- 納品書・請求書を通じた決済管理
- 中段階(生産進捗・在庫・品質管理)
- 生産の進捗状況の管理
- 在庫の把握と調整
- 品質保証のための管理
- 後段階(出荷・受発注管理)
- 顧客への納品と請求業務
- 出荷・提供の進捗管理
このうち、前段階と後段階の受発注管理は、業種や生産品目に関係なく一般的な業務活動です。
例を挙げると、Amazonや楽天市場などのECサイトの仕組みにも似ています。
業種業態によって異なるポイントは「中段階の管理」
問題となるのは 中段階の生産管理部分 です。
例えば、以下のような違いが生じます。
- 生産形態の違い
- 大量生産なのか、少品種少量生産なのか
- ライン生産なのか、セル生産なのか
- 部品製造なのか、完成品製造なのか
しかし、これらの違いを俯瞰してみると、多くの共通点があることが分かります。
進捗管理の共通点
進捗管理の基本は 「工程を区切り、IN/OUTの管理を行うこと」 です。
具体的には、次のような手法がよく使われます。
- FIFO(先入れ先出し)
- ロケーション(LOC)管理 … 工程ごとに管理
- オペレーション(OP)管理 … 作業単位で管理
例えば、半導体業界では「LOC管理」に加えて「OP管理」を導入し、より細かい管理を行っています。
要は、どこでボトルネックが発生しているかを可視化できる仕組みが重要なのです。
品質管理の共通点
品質管理の方法は業種によって異なりますが、根本的な目的は共通しています。
- 目視検査なのか、計測器測定なのか
- 抜き取り検査なのか、全数検査なのか
手法が異なっても、「結果を記録・管理する」という本質的な部分に大きな違いはありません。
在庫管理の課題
「工程在庫をリアルタイムで把握したい」というのは多くの企業の課題ですが、精度を求めるほど矛盾が生じやすくなります。
この点については別の議論が必要なので、今回は割愛します。
まとめ
こうした視点から整理すると、生産管理システムの6割程度は共通の仕組みで対応可能 であり、残りの4割は各社の独自パラメータや係数の設定でカバーできる可能性があります。
この仮説を基に、今後さらに詳細な検討を進めていきます。
次回は、「なぜ汎用品だけでは対応できないのか? 現場の事情」 について掘り下げます。