
企業のIT支援を行う中で、特に多く寄せられる相談のひとつが「共有ファイルの管理」に関するものです。
前回のコラムでは、「とりあえず」で始めた共有サーバーとバックアップ環境が、やがて管理が追いつかなくなり、結果として“無管理状態”に陥ってしまった事例について紹介しました。
今回は、その“無管理状態”にどう対処すべきか、具体的な方策について考えていきます。
■ 無秩序な共有サーバーに手を入れるのは非現実的
いったん無秩序に膨れ上がった共有サーバーを、あとからルールで整理しようとしても、多くの場合うまくいきません。
なぜなら、既存の業務ファイルが複雑に絡み合い、全ユーザーに新ルールを周知・徹底するには膨大な時間と労力がかかるからです。
そのため、私たちがご提案するのはこうです:
「いまの共有サーバーには手を入れず、新たに“管理された共有環境”を立ち上げる」
既存の共有サーバーはそのまま稼働を続けますが、原則として管理や容量の増強は行いません。いわば“アーカイブ的存在”として扱います。
■ 「シン共有環境」の構築がカギ
次に取り組むべきは、“新しい共有環境”の設計と構築です。
まずは経営層や部門長の理解と承認を得て、クラウド型/オンプレ型いずれかの新たなファイル共有環境を準備しましょう。
ポイントは以下の3点です:
- 保存対象は業務上の共有資料のみに限定
- 個人ファイルの保存は禁止
- 管理ルールと運用ポリシーを明確化
■ フォルダ構成の考え方──紙の書類棚をイメージせよ
新環境を設計する上で、もっとも悩むのが「フォルダ構成(ディレクトリ構造)」です。
この点は部門長などに委ねるべきですが、実際には「誰もやってくれない」「決めきれない」というケースも多いでしょう。
そこで原点に立ち返ります。
オフィスにある書類棚やキャビネットを思い浮かべてください。バインダーの背表紙に書かれているラベルが、そのままフォルダ名に相当します。
理想的な構成例:
第一階層:部署名
第二階層:書棚(カテゴリ)名
第三階層:具体的な案件名やファイル名
このように、実際の業務と親和性のある構造にすれば、利用者も迷わずに保存・検索ができます。
■ 「段階的移行」と「ルールの明文化」
新しい「シン共有環境」を構築したら、既存のファイルを段階的に移行します。
その際、以下のようなルールを明文化しましょう。
- 個人フォルダの作成・保存は禁止
- フォルダ構成は原則2階層まで。作成には管理者の承認が必要
- 定期的にフォルダ構成と保存内容を見直す
旧共有サーバーは原則読み取り用として維持しつつ、積極的な業務利用は「シン共有環境」に切り替えることで、整理された状態を保ちやすくなります。
■ 多少の不満は「割り切り」で乗り越える
こうした切り替えを進めると、少なからず現場から不満の声が上がるかもしれません。
「前のほうが自由で楽だった」
「いちいちルールに従うのは面倒」
しかし、ここで折れてはまた“無管理”に逆戻りです。
そのため、多少の批判には「知らんがな」くらいの気持ちで割り切りましょう。
■ まとめ:「あなたの困ったは既に回答を持った誰かがいます」
このコラムは、街のITサポート役=「まちの総務」としての実践的な提案のひとつです。
他に有効な方法や成功事例があれば、ぜひ教えてください。
「あなたの困ったは既に回答を持った誰かがいます」
管理の仕組みは、一度構築すれば長く企業の資産になります。
みんなで協力して、“秩序あるファイル共有”を目指していきましょう。