ビジネスの場でも、士業や金融関連の専門家とお話しする機会が多いのですが、その中で話題になることのひとつが「相続」です。
法制度の話は堅苦しくなりがちですが、相続は誰にとっても無関係ではなく、人生で数回、多くても数回しか直面しないからこそ、理解が難しいテーマでもあります。

今回は、あくまで一人のビジネスパーソンとして、好奇心から調べたり、聞いたりした内容を「素人目線」で整理してみました。
※専門的な内容については、正確性に欠ける部分もあるかもしれません。参考程度にお読みください。

■ 相続とは何か?──お金や不動産だけではない

「相続」とは、ある人が亡くなったときに、その人が保有していた財産や権利・義務を、法定相続人や遺言によって指定された人が引き継ぐことです。
対象となるのは、不動産・現金・株式といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナス資産も含まれます。
相続を行うには、「相続する(単純承認)」「限定承認する」「相続放棄する」といった選択肢があり、手続きが必要です。

一見よく耳にする話ではありますが、実際に自分が当事者になると、「知っている」と「できる」の差に戸惑うことも多いと聞きます。

■ 相続税が発生するのは一部の人だけ?

ここでひとつ、興味深いデータをご紹介します。

令和4年(2022年)の死亡者数:1,569,050人
相続税が課税された被相続人:150,858人(全体の9.6%)

つまり、相続税が実際に課税されるのは、亡くなった方の約10人に1人に過ぎないということです。
この数字を見て「資産家ってそんなに少ないの?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。
多くの方が相続税の非課税枠(基礎控除)を上手に活用しているというのが実情のようです。

■ 相続税がかからない? 基礎控除の仕組みを知る

相続税には「基礎控除」という優遇措置があります。計算式は以下の通りです。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の人数)

たとえば、相続人が3名(例:配偶者と子ども2人)の場合、
3,000万円 +(600万円 × 3)= 4,800万円 までは相続税がかかりません。

つまり、相続財産の評価額が4,800万円以下であれば、相続税は「ゼロ」になります。
※この金額には、金融資産だけでなく、不動産(=土地・家屋の評価額)も含まれる点に注意が必要です。

この仕組みにより、日本の相続の約90%が「非課税」となるのです。

■ では、4,800万円を超えた場合は?

相続財産が基礎控除額を超えると、そのオーバー分に対して相続税が課されます。
相続税の税率は累進制(=金額が大きいほど税率が上がる)です。

例えば、相続財産が1億円あり、相続人が2人の場合:

  • 基礎控除:3,000万円 +(600万円 × 2)=4,200万円
  • 課税対象額:1億円 − 4,200万円 = 5,800万円

この5,800万円に対して、相続税が課税される仕組みです。具体的な税率は金額により異なるため、詳細は国税庁や信頼できるサイトをご確認ください。

■ お金があってもなくても、相続は大変

相続には、お金が「ある・ない」に関わらず、手続きの煩雑さや家族間の調整など、多くの課題が伴います。
実際には、「もめるほどの資産はない」と思っていた家庭でも、感情的なトラブルに発展することは珍しくありません。

■ 次回予告:「基礎控除を超えた場合の節税対策」

次回は、基礎控除を超えるケースにおいて、どのような節税対策が考えられるのか──
たとえば、生前贈与や不動産の評価引き下げなど、実際に行われている手法について、わかりやすく整理してご紹介する予定です。

【まとめ】

  • 相続税が発生するのは全体のわずか約10%
  • 基礎控除制度を活用すれば、多くの人が非課税で相続できる
  • しかし、手続きや家族間調整など「お金以外の難しさ」も多い
  • 節税対策は早めの準備がカギ

人生で数回しか経験しないからこそ、知っておくべき「相続の基本」。
今後の人生や家族のためにも、まずは正しい情報に触れておくことが大切だと感じています。