多くの企業担当者の方々とお話をする中で、共通して浮かび上がってくるDXの阻害要因があります。
今回は、特定の企業に限らず、さまざまな現場で「あるある」として見受けられる事例を取り上げます。
きっと、皆さんの職場にも思い当たる節があるのではないでしょうか。

ハブ役の事務員がDXのボトルネック? いいえ、そうではありません

どの企業にも、社員間の情報をとりまとめ、集計し、社内を円滑に回してくれている“事務の方”がいらっしゃいます。
彼女たちはいわば社内のハブ的存在。社員からの様々な情報を受け取り、整理し、共通フォーマットでアウトプットする重要な役割を担っています。

こうした仕組みは、昭和の時代──まだPCやクラウドがなかった頃には、とても理にかなったスタイルでした。
しかし令和の今、業務量や情報量が格段に増えても、仕事のやり方が当時のままであるケースは少なくありません。

増え続ける負荷、進まぬ改善。ハブ役が疲弊している理由

DXを推進しようとシステムを導入し、業務効率化を目指しても、「なぜかうまく回らない」と悩む企業は多いものです。

その背景には、事務担当者が非効率な集計作業や“交通整理”の業務に追われているという構造があります。
本来、インプット側の社員が少し意識を変えて情報を整理・統一して提供すれば、事務員たちの負担は大きく軽減されるはずです。

しかし、ここで立ちはだかるのが「昔ながらの働き方を変えたがらない」社員たちの存在──
特に、長年のやり方を変えようとしない“ベテランおじさん社員”が、抵抗勢力になるケースが少なくありません。

「それ、あなたの仕事でしょ?」という一言がDXを止める

たとえば、入力の形式を統一してもらおうと依頼すると、「やり方がわからない」「面倒くさい」「それをやるのが事務の仕事じゃないの?」と返される。
こうした“変化に対する無関心”や“当事者意識のなさ”が、結果として事務担当者に過大な負担を強いてしまい、DX推進の足を引っ張っているのです。

DXは単なるシステム導入ではありません。
一人ひとりの意識と行動が変わらなければ、本当の意味での変革は起こらないのです。

ハブ役を守れる組織こそが、DXに強い組織

決して、ハブ役の事務担当者がDXの妨げになっているわけではありません。
むしろ、彼女たちは現場の変化に気づき、改善しようと努力している当事者です。

問題は、その努力を理解せず、支援せず、変わろうとしない“周囲の人たち”にあります。
DX推進には、職種や年齢に関係なく、組織全体で「変わること」を受け入れる姿勢が求められます。

社内の空気を変える一歩は、“理解”と“協力”から

職場のどこかに“変化に疲れたハブ役”がいませんか?
その方が孤軍奮闘していないか、支えるべき立場の人たちが足を引っ張っていないか──
今一度、社内の空気を見直してみることが、DXの第一歩になるはずです。