行政がデジタル化を推進する際には、デジタルが苦手な層やスマートフォンを持たない層へも配慮し
平等性を担保しなければならないという観点から、施策が遅れがちになるケースがあります。

また、せっかく良い行政サービスを導入しても、活用に必要な予算を市税で賄う以上
「地域外に資金が流れるのでは」という懸念から批判が集まることも少なくありません。

こうした事情が積み重なり、デジタル施策は常に課題と向き合いながら進めざるを得ない
これが行政現場の悩みでもあります。(あると思います)

しかし近年、その状況を突破する“実践的で効果的な取り組み”が各地で生まれています。
その中でも、今回注目したい事例がこちらです。

地域デジタル通貨「OTACO(オタコ)」は行政DXの好サンプル

OTACOとは群馬県太田市は、キャッシュレス化の推進と市内経済の活性化を目的に、デジタル地域通貨
「OTACO」を導入しました。OTACOは専用アプリまたは専用カードにチャージし、QRコード決済で利用
できる地域限定のデジタル通貨です。

地域デジタル通貨自体は珍しいものではありませんが、太田市の取り組みが優れているのは
年に一度ほどのペースで実施されるポイント還元キャンペーンです。

OTACO20%上乗せキャンペーンを実施します。
キャンペーン期間中にOTACOスマートフォンアプリまたはOTACO磁気カードを使ったチャージ購入
に対して、上乗せポイントを付与します。​​

まさに“大盤振る舞い”の内容です。
デジタルが苦手な方やスマホを持たない方からすると「不平等だ」という声が上がりそうですが
施策の目的はあくまで市内経済の活性化デジタル推進
積極的に利用する方には還元し、利用しない方は通常どおりという、極めてシンプルな仕組みです。

ここで重要なのは、これは差別ではなく“区別”であるという点です。

メリットを受ける機会はすべての市民に平等に提供されています。
選ぶかどうかは、利用者側の意思に委ねられる・・これがポイントです

実際、キャンペーン当日には、孫に付き添われた高齢者がコンビニATMに列をつくるなど、行動変容に
つながる効果が出ています。「現金派」と公言する方までもが20%還元に惹かれるのですから、心理的
インセンティブの力は侮れません。

地域デジタル通貨が“地域内経済”に効く理由

デジタル地域通貨の強みは、利用先が地域内に限定されることです。
市税を投入しても、その分の価値が地域内で循環し、市内事業者への還元となります。
これこそが地域活性化の本質です。

多少の税投入があったとしても、市内の消費下支えや経済活性化に対する効果は非常に
大きいと考えられます。
さらに、デジタル通貨の普及によって将来的には、

  • マイナンバーとの連携
  • 給付金・助成金のスムーズな支給
  • 各種行政サービスの効率化

などにもつながり、行政DXの大きな土台となります。

太田市のOTACOは、まさに“デジタル推進をどう進めるか”という点で、全国の自治体にとって
手本となる好事例と言えるでしょう。

他地域でも広がる「デジタル×地域経済」の取り組み

各地域でも、デジタルを活用した行政施策の工夫が進んでいます。
以下の取り組みも参考になります。

デジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ)
※概要は上記リンク参照

今後も、参考になりそうな事例があれば随時解説していきます。