
企業向けにDX研修を実施していると
特に多いのが「中堅社員向け」「管理職向け」のプログラムです。
背景には、これまでデジタルと距離を保ってきた世代が
いよいよ本格的にデジタルと向き合わざるを得なくなったという現実があります。
この危機感は、今や地方の中小企業にまで確実に広がってきていると感じます。
デジタルは身近だったはずの世代が、なぜ苦手意識を持つのか
中堅社員から管理職世代は、主に40代・50代の方々です。
Windows95が登場し、PCが一気に普及した1995年頃から約30年が経過しています。
この世代は、社会人になった時点ですでにデジタルが身近にあった世代と言えるでしょう。
それにもかかわらず、「デジタル=苦手」という意識を持つ方が少なくありません。
職場環境の影響もあるとは思いますが、業務上はデジタルと一定の距離を保ったまま
仕事が成り立ってきた結果、気づけば今になってデジタルに追い立てられている──
そんな感覚なのかもしれません。
「必要なのは分かっている、でも今さら…」という本音
研修に参加される中小製造業の管理職クラスの方々からは、よくこんな声を耳にします。
「デジタルが重要なのは分かっている」
「でも、今さら仕事のやり方や長年の慣習は変えられない」
「とはいえ、DXの波が目の前まで来ている」
こうした葛藤の末に、「仕方なく研修に参加している」というケースも正直あるでしょう。
私自身、数多くの研修を担当する中で、その気持ちは痛いほど理解できます。
「今さら新しいデジタル技術を覚えろと言われても…」
「あと何年この会社にいるか分からないのに、リスキリングと言われても…」
研修の場でこうした本音を共有すると、不思議と一体感が生まれます。
「同じことを感じているのは自分だけじゃない」と分かるからです。
多くの人が誤解している「DX研修=技術習得」という思い込み
DX研修に参加される中堅社員・管理職の多くは、
「これからデジタル技術の勉強をさせられる」と身構えています。
正直に言えば、興味のない分野の技術を一から深く学ぶのは簡単なことではありません。
しかし、DX研修の本質はそこではありません。
検索すれば分かるような技術的な詳細は、若手社員や興味・適性のある人に任せれば良いのです。
興味のない分野を無理に深掘りする必要はありません。これは英語教育にもよく似ています。
管理職に求められるのは「深さ」より「共通言語」
デジタルが苦手、あるいは関心が薄い世代にとって重要なのは、
まず「表面的な理解」で十分だということです。
難解な専門知識ではなく、基本的な言葉やキーワードを正しく押さえること。
これだけでも大きな意味があります。
それは若手世代や技術者と会話をするための「共通言語」になります。
ここから逃げてしまうと、世代間・職種間の溝はさらに深まってしまいます。
DXにおける基本原則:「管理」と「運用」を分けて考える
管理職向けのDX研修で、必ずお伝えしているのが
「管理と運用は分けて考えるべき」という考え方です。
一般論ですが、
・運用(技術)が得意な人は、管理が苦手
・管理が得意な人は、運用(技術)が苦手
多くの現場を見ていると、この傾向は一定程度当てはまります。
自分の役割を理解すれば、学ぶべきポイントは見えてくる
技術を極める人は、どうしても自分の専門に集中しがちで、
全体を見る余裕がなくなることがあります。
一方、管理を担う人は、全体最適を考える代わりに、
個別技術の深掘りまでは難しい場合が多いものです。
だからこそ、管理職や中堅社員は「どこに注力するか」を意識することが重要です。
技術追求型を目指すなら、プログラミングやハードウェアの知識を徹底的に学ぶ。
管理者タイプであれば、最低限のデジタル用語や技術の概要を理解し、
技術者が力を発揮しやすい環境を整える。
マウントではなく、補完し合う関係をつくる
DXにおいて、技術者と管理者のどちらが上という話は意味がありません。
重要なのは、お互いの得意・不得意を理解し、補完し合うことです。
中堅社員や管理職の皆さんには、ぜひ「雑学を楽しむ」感覚でデジタルのキーワードに
触れてほしいと思います。
それが結果として、組織全体のDXを前に進める大きな一歩になるのです。

