DXの本質として、「目的意識を持って取り組みましょう」と言うのは簡単ですが、意外に見過ごしてきたケースが多いという現実があります。自身の経験とお客様との接点から得た内容について、多くの方に参考になりそうなので共有します(これは特定企業に限ったものではありません)。
製造業などでは、「ISO国際標準」を取得している企業が多いと思います。私自身も前職ではこの関連の業務や品質部門の担当をしていた経験があり、ここには結構な思い入れがあります。
ISO取得企業であれば、おそらく品質マニュアルとして「監視・計測器管理規定」と呼ばれるものを制定していることでしょうか?
「監視・計測器管理規定」の目的は、製品が定められた要求事項を満足するため、製品の特性を監視・測定する機器を管理する基準、手順などを定め、適切に管理することを目指しています。これはいわゆる「製品品質を検証するための計測器を適切に管理しましょう」というルール内容です。
それでは、このルールを遵守する役割を受けた「担当者の職務」は何でしょうか?一般的には「計測器の管理と運用」になり、具体的には計測器がきちんと管理され、正確な計測値が得られるように校正が行われているかがポイントになります。
そうなると、担当者の普段の業務は「計測器管理規定」に則った校正ルール(校正時期の遵守と校正業務)を確実に行うことが求められます。
ここで生まれるのが「計測器校正管理台帳」です
計測器の台数、種類、内容、設置場所、校正時期などを管理するために必要です。私の前職では半導体工場でしたので、数百台規模の計測器を複数工場で管理するのは大変でした。
そして忘れてはならないのが、「適切な校正作業」です。ルールの中で「校正時期(年単位)」が定められており、この時期を忘れずにリマインド管理(時期が来たらお知らせ)を行い、抜け漏れがないように工夫することが必要です。これは時代が変わろうが普遍の管理です。私も昔苦労した経験があります
前置きが長くなりましたが、「目的意識を持って取り組みましょう」に戻します。
計測器管理の目的は何でしょうか?
もちろん、「計測器を安定稼働させて製品品質を担保」することが大前提です。多くの企業では専任(兼任)でこの業務を行い、担当者は単なる監視者としての業務を担っています。
ここで注目すべきは、今まで計測器台帳としてExcelを活用していた業務を「脱Excel」としてkintoneでシステム化し、自動でリマインド管理まで行うサポートを行っている「まちの総務」の「企業向けデジタル推進サポートプログラム」です。
しかし、本論のテーマはここではなく、「目的意識を持って取り組みましょう」です。計測器管理においての目的意識とは何なのか、台帳管理をシステム化してリマインドを自動化することなのか?という疑問が生じます。 台帳管理のシステム化はIT合理化ですが、合理化した後に「DX」の文脈で「目的」を明確にできないか? これが本論の目的です。
計測器管理のDXテーマは、「製品品質は担保しながら校正合理化」ができないか?
個人的にはここに最も興味を持っています。具体的には、「計測器の役割を再認識し、計測ビッグデータ分析によって校正時期の見直しを実施し、結果的に品質担保しながら校正費用を削減できないか」というテーマです。
具体的な内容としては以下のとおりです:
- 校正機の役割層別: 計測器を全て同じくではなく、品質に与える影響度に応じて分類します。
- 品質影響度低い順に校正周期を見直す: 過去の計測ビッグデータをヒストグラム分析によってバラツキや安定度を検定し、現行の校正周期をエビデンスを元にして議論し、ルールを改定します。
これらを着実に進め、同機種の計測器においては代表装置を外部で校正し、それを基準機としてサンプル測定を行うことで外部流出コストも削減できます。
このように、「安定品質」を目指しながらも「費用削減活動」を「目的」とすることで、担当者の価値も高まります。これはデータを扱う担当部署だけが果たせる業務です。さらに、経験や職位(権限)とは関係なく、「エビデンス」が重要であるため、これを持っているなら新人や女性の担当者でも「ルール改定」を行うことが可能です。古い概念を取り外し、むしろこれらの担当者が新しいアイデアを導入することが求められます。
まとめとして、一つの業務をIT化とDXの観点から取り組むことで、過去の慣習に縛られず、「単なる監視管理」ではなく、「品質担保しながらの経費削減」を目指すことができます。こうしたマインドチェンジは「DX」の一環と考えられます。
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