シリーズ「中小製造業のシステム部門化への道」もいよいよ第6回目となりました。前回は「長年の凝り固まった関係回復は時間がかかる」というテーマでお話ししましたが、今回はその課題への具体的な対応策として、「利害の無い第三者か新たな担当が救世主」について解説します。

利害の無い第三者か新たな担当が救世主

「長年の凝り固まった関係回復は時間がかかる」ことについては、実際に当事者同士での解決は難しいと感じている方も多いでしょう。そこで、今回のテーマである「利害の無い第三者か新たな担当」が救世主となる方法について詳しく見ていきます。

まず、「利害の無い第三者」は前回も少し触れましたが、新たな刺客として「新たな担当」の役割も重要です。中小製造業では新規採用が難しいかもしれませんが、新入社員や中途採用の社員が入社した際には、彼らが新たな風をもたらし、閉塞感を打破することが期待されます。

ここで、「利害の無い第三者」と「新たな担当」のペアが最強の組み合わせとなります。その理由を少し解説しましょう。

今までできなかったことを進めるための方法の一つとして、マニュアルや情報の蓄積・共有体制の構築が挙げられます。ひとり情シス担当者が苦手とする業務マニュアルやトラブル問い合わせのナレッジ共有がこれに該当します。マニュアル作成については以前の記事でも取り上げましたが、属人化を防ぐためにも、簡単なPC設定程度であれば、IT担当が全て行わずにマニュアルを見ながら他の社員が対応できるようにすべきです。これにより、最初は手間がかかりますが、「自分のことは最低限自分でやる」という意識付けができます。

もう一つが「ナレッジ共有」です。ひとり情シス担当者がその都度問題を解決して終了してしまうケースが多いですが、問い合わせの内容、日時、担当者、対応内容などの情報を記録しておかないと、上司も状況を把握できず、管理が困難になります。情報が整理されていないと、トラブル発生時に優先順位を見誤り、急ぎでも実際には優先度が低い案件や過去に対応した内容が繰り返されることがあります。

このようなナレッジ共有は最初は手間がかかりますが、PC周りのトラブルに関するFAQは共通点が多く、既に多くの回答が存在します。まずはそれらの情報を社内で共有し、トラブル時には一度確認してから次のアクションに進むようにしましょう。さらに進んで、ChatGPTなどのツールを活用して自動で回答を提供することも可能です。

これらの環境を整えるだけで、PC設定や軽微なトラブルに関しては社員が自ら対応し、より重要な問題をIT担当が処理することで、約6~7割の効率化が見込まれます。こうして軽微なトラブルと大きな未知のトラブルに対処できる体制を構築しましょう。

「うまく行くのか」と疑問に思うかもしれませんが、このような体制づくりは必要不可欠であり、上司からも状況が見える化できるのです。まずはこの対応策を実践し、企業規模に関わらず、ITサポートの基本をしっかりと固めましょう。

次回は、具体的な進め方として「事象の棚卸しと優先順位付け」についてまとめます。お楽しみに。

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