中小企業経営者からこんな相談を受けることがあります。
「給与計算のアウトソーシングを検討しているが、どう思いますか?」
これは非常に良い問いかけだと思います。
アウトソーシングとは、社内業務の一部を外部の専門業者に委託することです。ただし単に業務を外部に任せるだけでなく、「企業価値を維持・向上させるために外部リソースを活用する」という意味合いで語られることが多いです。
そこで、まずAIにも尋ねてみました。
「給与計算業務のアウトソーシングは中小企業に広がると思いますか?」
AIの答え:
「はい、給与計算業務のアウトソーシングは今後ますます進む傾向があります。給与計算は複雑で時間がかかる作業であり、外部に委託することで効率化やコスト削減が可能です。また、専門的な知識や最新法令に対応できる点も魅力です。」
確かにこの答えに尽きる部分はありますが、AI頼みと言われないよう、”まちの総務”としての視点も踏まえて深掘りしてみます。
逆説的にアウトソーシングできない課題を考える
まずは、アウトソーシングする前に考慮すべき課題について見ていきます。
- 費用対効果
給与計算を外注するコストと、社内で実施する場合のコストをどう比較するかがポイントです。
- 小規模事業者: 少人数のため社内処理の方が効率的という考え方もあれば、ルーティン業務を外注して社員はコア業務に専念するという考え方もあります。
- 中堅規模事業者: 継続的なルーティン業務を「責任ある社内業務」として残すべきか、それともミスを減らすために外部に任せるべきか、判断が分かれるところです。 実際のコストは、従業員1人あたり月額500〜1000円程度と言われています。例えば、従業員100人の企業なら月額10万円。この費用を「社員給与」と考えるか、「業務の効率化やストレス削減のための投資」と捉えるかが重要です。
- 給与計算の特殊性
残業時間の計算や手当の違いなど、会社独自のルールをどう反映するかが課題です。ただし、現在のシステムは多くの場合これらに対応しており、他社事例に合わせて柔軟に運用を変更することも選択肢になります。 - 個人情報の取り扱い
給与計算には個人情報が含まれるため、外部委託に不安を抱く方もいます。しかし、NDA(秘密保持契約)やセキュリティの担保が進んでいるほか、従来から地域の社労士事務所へ外注している実績もあり、これをクラウド型へ移行するだけとも言えます。
中小企業における給与計算アウトソーシングの未来
大手企業ではすでに20年以上前から総務業務のアウトソーシングが一般化しています。しかし、これが中小企業で広がるには、次のような環境の変化が追い風となっています。
- クラウド型サービス(SaaS)の普及: 大手のみならず、中堅・小規模企業でも導入可能な手軽さが強みです。
- デジタル給与の普及: 給与支払いの仕組みそのものが変化し、アウトソーシングとの相性がさらに高まります。
一方で、大きな課題は「マインドチェンジ」です。これまで社内で行っていた業務を外部委託するという変化に対し、経営者や担当者の考え方を変える必要があります。
まとめ
給与計算業務のアウトソーシングは、コスト削減や業務効率化の観点で今後ますます進むと予想されます。しかし、導入にあたっては、費用対効果や自社業務の特殊性への対応、そして個人情報の取り扱いなど、慎重な検討が求められます。
5年後、給与計算のアウトソーシングやデジタル給与が当たり前になる日が来るかもしれません。
そのとき、”ノンコア業務は外部に任せ、コア業務に集中する”という発想が中小企業のスタンダードとなる未来が楽しみです。