
日本では海外に比べてやや遅れ気味だったものの、ここ数年でスマートフォンによるキャッシュレス決済が一気に普及し、現金からデジタル決済への移行が急速に進んでいます。
「便利な世の中になったな」と何気なく見過ごしていた方も多いかもしれません。しかし、フィンテック業界にとって見逃せない、大きなインパクトを持つニュースが舞い込んできました。
それが
Appleの「Tap to Pay」が日本でサービス開始 という発表です。
一般のユーザーにとっては、「ふーん、iPhoneでタッチ決済ができるようになったのね」と、あまり驚かずにスルーしてしまいそうなニュースかもしれません。
実際、これまでもQRコード決済やNFC(近距離無線通信)を使ったタッチ決済は存在しており、新しい技術というわけではありません。
しかし、今回は話が違います。
フィンテック関連企業にとって、この「Tap to Pay」は業界の勢力図を大きく塗り替える可能性を秘めた“脅威”として受け止められています。
なぜこれほどまでにインパクトがあるのか、少し背景を整理してみましょう。
従来の決済端末は「専用機ありき」
QRコード決済やNFCを使った非接触型決済は、基本的に店舗側に専用の読み取り端末が必要でした。
たとえば、QRコードを表示するリーダー、NFCを読み取る決済端末など、事業者はそれぞれの決済サービスに対応するために複数の決済端末を導入しなければなりませんでした。
飲食店や小売店舗のレジ周りを思い浮かべてください。読み取り機がいくつも並んでいる光景を見たことがあると思います。それはまさに「お客様のニーズに対応するための苦肉の策」なのです。
「Tap to Pay」はiPhoneだけで完結する
今回Appleが導入した「Tap to Pay」は、なんとiPhoneそのものが決済端末になるというもの。
つまり、事業者は専用のハードウェアを用意する必要がなくなり、iPhone1台あれば顧客の非接触決済を受け付けられるという画期的な仕組みです。
たとえば、顧客がiPhoneやApple Watchで「Tap to Pay」を使って支払うと、店舗側のiPhoneで受け取るだけ。これだけで決済が完了してしまうのです。
決済端末市場に大激震
この仕組みが普及していけば、従来の専用端末市場は急速に縮小し、関連企業には大きな打撃が及ぶ可能性があります。
さらに、iPhoneだけでなくAndroidにもNFC機能は搭載されています。技術的には異なるOS間でのタッチ決済も将来的に可能になるでしょう。
「Apple × NFC」という組み合わせが、フィンテックの領域だけでなく、グローバルな決済市場全体を塗り替える存在になる可能性すら感じさせます。
今後の動向に注目を
Appleの「Tap to Pay」は、単なる新しい決済手段ではなく、既存の決済インフラやサービスを再定義しかねない革新です。
今後、他の「〇〇Pay」や国内外の決済事業者がどう動くのか、業界再編が起こるのか──。
フィンテックの最前線で起きているこの変化に、私たちはしっかりと目を向けていく必要がありそうです。