
近年、生成AIの進化の中でも注目されているのが「画像生成」と「画像解析」です。
例えば画像生成では、ChatGPTに写真を与えて「マンガ風に」「ジブリ風に」といったプロンプトを入力すると、その指示に沿った画像をAIが生成してくれます。
一方で画像解析では、NotebookLMにPDFやURLなどの資料を読み込ませ、内容を文字として認識し、指示に応じた分析結果を返すことが可能です。
まずは遊び感覚で試してみると良いでしょう。しかしビジネスの現場に応用する視点で考えると、この技術の進化は非常に大きな可能性を秘めています。今回は、サポート先の企業事例から得たヒントを共有しつつ、「製造業における工数見積り算出」に生成AIをどう活かせるかを考えてみます。
製造業の課題:図面からの工数見積りは属人化の温床
製造業では一般的に、お客様から加工図面を受け取り、それを基に見積りを提示し、受注へとつなげます。
大手企業ではある程度、パターン化されたシステムが導入され、自動的に見積り算出できるケースもあります。しかし中小企業では多くの場合、営業担当や設計担当が図面を読み込み、人力で工数を積み上げる「人海戦術」に依存しているのが実態です。
この業務は高度な経験と知識を必要とし、仕組み化や後継者への継承も難しく、多くの企業で属人化が深刻化しています。
私自身、前職で同様の仕組み化に取り組んだ経験があります。当時はAIを活用する発想はなく、過去の膨大なデータを分析して共通点を抽出し、パターン化することで見積りを自動化する仕組みを構築しました。
今回のテーマは、この「データ分析と共通性の抽出」をAIと画像解析に置き換えられないか、という挑戦です。
AIに質問してみた:「図面から加工点を抽出できますか?」
例えば以下のような質問を生成AIに投げかけてみました。
「パイプ加工を行う製造会社です。完成品図面をもとに加工見積りを作成しています。図面から曲げ、溶接、穴あけといった加工点を洗い出し、工数見積りをしたいのですが可能ですか?材料費は加味せず、加工点数に基づく見積りに特化したいと考えています。」
するとAIからは、以下のような具体的な回答が返ってきました。
【1】加工点の洗い出し方法
- A. 手動確認+テンプレート化
→ Excelやスプレッドシートで曲げ回数・角度、溶接回数、穴あけなどを記録 - B. CAD図面の自動解析(DXF/DWG対応)
→ PythonやAutoLISPを活用し、曲げ箇所や接合点を抽出 - C. AI・画像認識の活用(PDFやスキャン画像対応)
→ 画像処理+OCRで線分や文字情報を検出
→ 例:「R50 曲げ」「溶接(銀ロウ)」といった記載を読み取る
【2】加工点数を基にした見積りロジック例
加工種別 | 単価(例) | 数量 | 小計 |
---|---|---|---|
曲げ加工 | ¥500/箇所 | 3 | ¥1,500 |
溶接 | ¥1,000/箇所 | 2 | ¥2,000 |
フレア加工 | ¥300/箇所 | 1 | ¥300 |
合計 | ¥3,800 |
この中でも特に注目すべきは「C. AI・画像認識の活用」です。
生成AI×画像解析が変える見積りの仕組み
このアプローチなら、過去データのパターン化を前提にせず、図面から直接加工点を抽出し、その数に単価を掛け合わせるだけで工数見積りを算出できます。
これが実現できれば、以下のメリットが期待できます。
- 属人化の解消:経験に依存せず、標準化したルールで見積り可能
- 精度と効率の両立:図面解析の自動化により、迅速かつ正確な算出
- 柔軟なコスト調整:加工単価を社内共通係数にすることで、人件費や材料費高騰時にも一括修正可能
まさに「生成AIの画像解析進化の最適解」と呼べる方向性ではないでしょうか。
まとめ
生成AIと画像解析を組み合わせることで、製造業における図面からの工数見積り算出は、従来の属人的な作業から脱却し、大きな効率化と標準化を実現できる可能性があります。
今後は実際の現場データを使いながら、お客様と一緒に評価を重ね、標準化に向けて模索していくことが重要です。
「図面から自動で工数を算出する」という未来像は、すでに目の前に来ているのかもしれません。