デジタル化とDXの曖昧な境界線
デジタル化とデジタルトランスフォーメーション(DX)は似ているようで異なる概念ですが、その境界線は時に曖昧です。現場では、デジタル化に偏ったDXや、デジタルとは直接関係のないDXも存在し、混乱を招くことが少なくありません。
ここでは、デジタル化とDXの違いを明確にするため、具体的な事例を用いて説明します。解釈に違いがあれば、ぜひご意見をお寄せください。
事例テーマ:「FAXを廃止するには?」
「FAXをなくそう」と考えた場合、デジタル化とDXの違いは以下のように整理できます。
デジタル化のアプローチ
まず、FAXの代替手段を考えることがデジタル化に該当します。具体的には以下のような方法があります。
- 相手先のメール環境整備
- クラウド上での共有環境整備、相手先が参照できる仕組みの構築
これらは、デジタル技術を使ってFAXを置き換える手段を考えることです。この段階では担当者レベルで対応可能です。
DXのアプローチ
一方、相手先がFAXの廃止に反対する場合、話は簡単には進みません。このとき、上長や経営層が出て調整を行う必要があります。相手を説得し、必要に応じて環境整備やサポートを行うことが求められます。
さらに、相手がなぜ紙にこだわるのかを理解し、別の対応手段がないかを模索する必要があります。例えば、スマホアプリを使った解決策を提案するなどです。ここまで踏み込んで業務フローを見直すことがDXの一環と言えます。
デジタル化とDXの違い
デジタル化は、既存の業務をデジタル技術を用いて改善することです。担当者レベルで実行可能で、具体的なツールや手段を導入することが中心です。
一方、DXは組織全体の変革を伴います。関係者を巻き込み、上長や経営層の協力を得て、従来の業務フローそのものを見直し、デジタル技術を活用して抜本的な改革を行うことです。
このように、デジタル化とDXの違いを理解していただけたでしょうか。デジタル化は代替手段の検討であり、DXは組織全体を巻き込んで行う変革です。担当者だけでは進められないプロジェクトを、上長や経営者を巻き込み総力戦で取り組むことで、真のDX効果を発揮することができると信じています。