ある企業のIT担当者から、「社内のOA関連の問い合わせ情報を共有するのに最適な方法は何か」という問い合わせがありました。

その担当者から後日談を伺いました。
「当初は情報入力の手間が増えて面倒だったけど、改めてナレッジの大切さを知りました」とのお言葉をいただきました。

これは提案した側からすれば、すでに答えが出ている内容です。ここで重要なのは「事前の手間を惜しまないこと」に尽きます。

多くのIT担当者と話をしていると、比較的フットワークが軽く、好奇心や探究心が強い傾向にありますが、こまめに文書を残したり、メモやマニュアルを作ることは面倒で嫌いなようです。

そのため、頭では分かっていても実践しないことが多いのです。得意分野には積極的でも、ナレッジを残すという面倒な行為は「忙しいからやっている暇がない」と考えがちです。

その結果、毎回同じ内容の問い合わせや対応が発生し、軽微な内容でも重大な内容でも同じように扱ってしまいます。特に忙しい時に限って問い合わせが増え、「自身の仕事が遅れる」という悪循環が起こります。これがFAQサポートにおける不満の原因となっています。

そんな中、手間がかかり当初は難色を示していた情報のナレッジ化(文書に残す行為)でしたが、簡易フォーマットに入力することで情報が蓄積されていきます。これまでは感覚で話していた内容が、きちんとしたエビデンスとして提示できるようになりました。

例えば、月に何件の対応があり、軽微な内容が何件、時間のかかるトラブルが何件、大きなトラブルは年に数回といった具合に数値で明確になります。

このデータを取得することが重要で、問い合わせのレベルをランク(軽微、中程度、重大)に分類することで、軽微なトラブルはナレッジを見て各自が対応できる環境作りが可能になります。重大な内容は計画的に予算を組み、専門家を交えて予防保全や代替機を準備するなどの対応もできます。

その結果、担当者は中程度のトラブルに経験を積みながら対応し、対応策が明確になった段階で軽微なトラブルに移行していきます。社内でも徐々にレベルアップが図れます。

雑多なトラブル情報(アナログ情報)も整理(デジタル化)することで再活用や分類しての対応策が明確になります。結果として、最初の一手間で大きな進歩(変革)が可能になります。

担当者も情報の重要性を実感し、ユーザー側も徐々に情報共有の重要性を感じていきます。このような環境変化も重要なDXの一環です。

ここまで来れば、多少の投資を行い専用のFAQシステムを導入してもうまく機能すると考えます。そして次のステップとして「チャットボット化」や「まちの総務ナレッジ共有サイト」などを構築し、他社の方も巻き込んで共助の世界を作っていきたいと思います。

一緒に作っていきましょう。