中小企業でのデジタル化が話題となっていますが、人員や予算の制約から「ひとり情シス」に頼らざるを得ない現状も多く見られます。私自身も多くの現場を目にし、経験を踏まえて「ひとり情シスを救いたい」というシリーズでアドバイスや応援の言葉をお届けしています。

前回は、トラブル発生前の事前対策にコストをかける重要性を述べました。今回は、デジタル化の進展に伴うデータの収集と、その活用法に焦点を当てたいと思います。

データを集める癖をつけ、活用する術を学ぶ

ビッグデータの活用が叫ばれていますが、デジタル技術の発展により、今では膨大なデータを簡単に取得できるようになっています。その一方で、集めたデータを活かしきれていない企業が多いのが現状です。以下、2つの重要な提言をします。

本質的なデータの取得とムダなデータの区別

データをただ蓄積するのではなく、何を取るべきかを明確にし、ムダなデータを省くことが重要です。ISOや税務上の規定に基づいて書類を保管するのは当然ですが、無計画なデータの蓄積はかえって混乱を招く恐れがあります。

データの分析と活用

取得したデータを分析し、ビジネスに活かせているかどうかを自問してみてください。中小企業では「時間がなくて分析できない」という声がよく聞かれますが、実際には「分析の技術がない」ことが大きな課題です。

欧米のテック企業はビッグデータをビジネスに活用しており、データの重要性を理解しています。日本企業もデータを蓄えるだけでなく、それを活用する意識を高めていく必要があります。

具体的なデータ活用の事例

例えば、日々発生するITトラブルに対して、情シス担当者が対応していますが、これらのトラブル対応を記録しているでしょうか?「軽微なトラブルだから」と対応履歴を残さないケースが多いかもしれません。

しかし、これをエクセルなどで簡単に管理するだけで、以下のようなメリットが得られます。

  • トラブル対応状況を上長が把握しやすくなる
  • 軽微なトラブルはマニュアル化し、担当者の負担を軽減
  • 重要なトラブルは共有し、今後の対策を協議可能

データを分析し、活用することで、過去のトラブルから効率的な対策を立てることができ、結果的に業務の効率化が図れます。

宝の山(データ)をどう活かすか?

「忙しくて分析している時間がない」ではなく、「データをどう活かすか」という視点に切り替えてみてはいかがでしょうか。データ活用が上手くなると、意外にも楽しいと感じられるかもしれません。

このような形で、データ収集とその効果的な活用について考える癖をつけることが、今後のデジタル化推進における重要なポイントとなるでしょう。